今でもはっきり憶えているのだが、平成15年頃、職場で日々上司のパワハラに遭っていて、夜も眠れないくらいの散々な精神状態になっていた。そのパワハラ攻撃は同僚が見ていても辟易するものだったが、わざと周囲に見せつけるようなやり方で自分の優位性・正当性を誇示するところがあった。そしてこういったパワハラ行為の常習は、異動となった先々の部署で苛めやすい特定の一人をターゲットにして苛め抜くものだったと判った。小心者で器が小さかったのである。しかし悪事は必ずバレるもので、いつかは人事担当部局の知れるところとなった。最後は憐れな結末を迎えた。
さてパワハラの最中私は職場を辞めたくなっていたが、子供の教育もあるしそれはとんでもないことだった。休日が唯一の安らぎの時間で、土曜日は午後6時にフジテレビの「ミュージックフェア」などを観ながら缶ビールを飲んでいた。何かのきっかけで裏番組の「人生の楽園」(テレビ朝日)を見つけた。パワハラを受けてすぐにでも退職したいと思っている自分に夢を与えるような内容だと自分なりに感じた。自分を現実逃避させてくれる30分間番組だったのである。それからはチャンネルを切り替え、毎週同番組を観て現実から逃避していた。西田敏行さんのナレーションも上手で視聴率も常に高く現在も放映されている。
それ以来10数年、パワハラの難が既に去っていても「人生の楽園」は、ほぼ欠かさず缶ビールを飲みながら楽しみに観ていた。定年後でも老後でも、あんな暮らし(家庭菜園、商売、ボランティアなどなど)をしたいなぁ、夫婦者ではない自分には多分無理かな、などと思いながらテレビの前に座っていたのである。
そして4年前、定年退職した。人生の楽園に暮らしてもいい時期になったのである。ところがである。いざ退職してからは、なぜか「人生の楽園」を一度も観ていない。観る気がしない。やはり私にはテレビで放映されているような暮らしは所詮無理なのである。川柳という文芸しか自分にはない。メモ用紙とシャーペンを手にして座椅子にもたれながら句を詠んだり、こうしてパソコンとにらめっこしながらキーボードを叩いたりする日々が一番性(しょう)に合っているのである。
土曜日の午後6時に観る番組は久しぶりに「ミュージックフェア」へ戻った。
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