
2六歩静かな海へ出る孤独
藤井聡太七冠は、やがて前人未踏の八冠を戴く日も夢ではない。将棋の先手が飛車の頭の歩を一齣すすめることが「2六歩」で、今は静かな海へ漕ぎだした瞬間である。個人競技では内に秘めた闘志を除けば全て孤独である。
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盤壽とて数えきれない崖っぷち
81歳を(半寿)盤寿というが、碁盤目の9×9=81からも盤寿というらしい。人間も80歳の峠を越えれば人格も環境も落ち着いて来るのが世間一般の相場。ところが、この半壽は、数々の危ない目に遭っているという。まずは、健康、そして人間関係、金銭問題、等々の崖っぷちを泳いでいる。やがて季節が変われば、風向きも...【続きを読む】

出しそびれて使えなくなったエロス
ちょっかいを出すつもりで密かに準備していたキューピットがもたもたしているうちに二人の熱が醒めてしまって役立たずになったという。何事にもチャンスがある。慎重にも、速攻にもタイミングさえ掴めば簡単なのにである。踏ん切りの悪さに嘆きも聞こえる。
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罪じゃない好きで騙されたんだから
他人を騙すのは一般的に言えば軽重は別にして罪である。私の場合は希望して自ら進んで騙して頂いたのだから罪にしないで下さいと宣う。自ら進んで騙される中味にもよるけれど、覚悟の上で、だまされるとは、相当な趣味である。マニアが覚悟の上でだまされるとは、負けるにもキャリアがいる。(雛罌粟)
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当然が不足を言うて生きている
財力体力能力どれをとっても、人並外れて優っているとか、優れているものがひとつもない。現状の生活は周囲から見れば「それなりに当然」である。にも拘らず、あれが少ない、これが足りない、それが悪いと並べ立てながら自死の考えは微塵も持たず息をしているという身近なおはなし。
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飛竜頭が読めずメニュー裏返す
飛竜頭(ひりょうず)とはところてんのことらしいが、メニューを手にして、真っ先に目に飛び込んできた飛竜頭が読めないのでメニューを伏せて特別大きな看板にある「本日の特売サービス」を指定している。この字が読める別のテーブルのお客は、そのことが言いたくてわざわざ注文してくれているらしい。店長のにんまりが見え...【続きを読む】

三歳児なりの哀しみ抱いて泣く
三歳になると幼児も自己主張がしっかりしてくる。「三つ子の魂百まで」ともいうが、文明が進歩しても、幼児の発育が早まっても、今でもしっかり通用する。声も立てずに涙を拭う所作は、立派な大人と変わらない。
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矛盾した盾役の道振り返る
考えてみれば人生の大半は盾役だったような気がする。個性のなせる業か、運命なのか。鉾役の攻撃役には、結果次第で飛躍のチャンスがあった。盾役は完璧に守って当たり前で、破られでもすれば、たちまち明日の糧さえ失いかねない綱渡りも経験した。相手にお情けも貰いながら、幸運だったなあと、くねくねよじれている戦歴を...【続きを読む】

試されている「花マルをあげましょう」
花マルを貰ったことのない幼年期を過ごしたものには価値観が異なるかもしれないが、「あげましょう」と言われて悪い気はしないが、その自信の無さが、上五の不信感に繋がっている。疑うことを知らない若者と、戦に翻弄されながら少年期を過ごした者の、根本的なスタンスの違いかも知れない。
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わたしの海涙の味に教えられ
おとなになると流す涙の味が、塩っぱいからほろ苦さに変化する。海の塩辛いのは常識だと考えていたが、苦さの方がしっかり強くなってきた。泣きに来た私の海もきっとこの味なんだとしみじみ知ってしまった味に唇を噛みしめている。
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旧姓で呼ばれなくなり遥かな日
情報過多の現代では、理解されにくい句材である。新婚ほやほやの頃には、友人、知人から旧姓で呼ばれることも珍しくないし、親しみを込めて故意に旧姓を使うこともある。結婚に夫婦別姓が物議を醸していることも踏まえて、遥けし日である。やがて、歴史の中に取り残され、句意も損なわれる日が来る。
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おとこの嘘見抜け出したら萎みだす
花が真っ盛りの頃には、ほかの花に負けまいと精一杯に花弁を開いて、絶好調である。忍び寄る男の譫言も甘く聞こえる。時には勇み足もあるが若さで乗り越えてきた。。いま、ようやく男の常とう手段の隙間が目に付き出したころには、お声がけもめっきり減って来たという。やがて、見向きもされなくなるのが大方の味わう浮世の...【続きを読む】

ごめんねと言えない私悪くない
「ゴメンね」とひと言詫びればその場は丸く収まるし、周囲もそれを望んでいる。それでも私は、どうしても「ごめんね」が言えない。それどころか悪くないと開き直っている。折角の美貌が台無しの仕草である。都合の悪い証拠は「ねつぞう」だと決めつける政治家が罷り通る世の中で「カワイイネ」とタグをつけて進ぜよう。
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瀬戸際で質されている隠し味
一次二次と多数の挑戦者を退けていよいよ最終審査。面接官の鋭い視線が「体重とスタイルに切り込んでくる。此処まで来れば、本望だとはいかない。何が何でも勝ち残らなければ、これまでの、努力と苦労が水泡に帰す。本音を吐いて、運を天に任すのか。隠し味による合否判定は「どうなんだ?」あなたのの判断にお任せするほか...【続きを読む】

一瞬で雰囲気替わる噂の輪
若者の雰囲気に敏感な行動は呆れるほど鋭い。まして、渦中のうわさ話など、昔だったら「さもありなん」で潜って来た難問があっという間に拡散して、場の空気が険悪な様相を呈する。僅かな火種が大失火となり炎上する例をたくさん見てきた。その機敏さに欠ける老人が若者のグループに馴染まないのも頷ける。
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独りよがりで胃もたれのするメール
リズム感に乏しいが、胃もたれのするメールが見つけものかも。老いてくると経験と裏腹に頑固は避けて通れない現象ではある。それがそのまま、メール相手の消化不良を呼び、胃もたれに繋がっているという。この句は、受信者側ではなく送り主側の句として読んで貰えれば嬉しい。それが、現代川柳を教わって来た者の基本スタン...【続きを読む】

弾のない銃は哀しいほど静か
台風2号の残党が静岡地方で大暴れ、水戸大会からの帰途、ひと晩東京駅で足止めされて、ホームでの仮宿。結局、北陸新幹線の金沢経由で36時間遅れて帰宅。ブログも大幅に遅れて仕舞いました。
アメリカでは、相変わらず銃による無差別乱射殺傷事件が後を絶たない。日本でも最近は騒々しい。安倍元総理が凶弾に倒れたのも...【続きを読む】

足音を立てぬ王様嫌われる
王様は王様らしく堂々と振舞ってもらわないと、側近が困る。上司の陰口を叩いていたら本人が側にいた、なんてことは誰もが経験済み。王様の立場からすれば、側近のフィルターを通しての噂より、庶民の偽らざる生の声が聴きたいものだと、悪意は無い。少し忍び足で下々の本音らしき内緒話に近づくのもむべなるかな。
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