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 新型コロナのワクチンが開発されて、感染の大流行から1年も経たずに欧米では接種が開始された。開発には幾多の臨床試験を経て5年、10年の期間を要するのが一般的だったが、ハンガリー人の生化学者カタリン・カリコ氏の研究によって実用化された「mRNAワクチン」の有効性はすごいもので、大方の日本人の予想を裏切って予防接種が実現した訳である。
 ワクチン接種が欧米で始まった頃、注射してすぐに現れる副反応のことが話題になった。テレビなどを観ていると、発熱や怠さ、頭痛などは半端なものではなかった。当時の私は将来的に見た安全性に不安や疑問を感じたが、副反応の酷さからも打ちたくないという気持ちがあった。
 しかし、欧米から遅れて昨年の春頃から日本でも高齢者や医療従事者を中心にワクチン接種がスタートし、どうもワクチンの危険性はあまりないことが次第に判ってきた。私にも夏ごろには接種申し込みの案内が役場から届いて、結局受ける覚悟を決めた。みんなで打てば怖くないという心境に変わったのである。
 近くに住んでいる友人の話しを聞くと、当初の2回接種のうち1回目より2回目の方が高い発熱になるらしい。これは大切な情報だった。案の定、私の場合も1回目の翌日には37度を超える発熱、約3週間後の2回目の翌日には38度前後になるくらいだった。
 38度近くになるとかなり怠くなる。家にいて動きたくない。じっと座椅子に座ってテレビを観ながら1日をやり過ごした。それでも、これが明日も続くようだったら嫌だなぁと怖がった。しかし、友人の情報どおり翌々日は平熱近くに戻った。事前に副反応の情報を身近な人間から入手していてよかった。それを知らなかったら不安に駆られ、解熱剤を飲んでいたかもしれない。
 3回目、4回目の接種の時は、どうせ前と同じように熱は出るだろうと予め覚悟を決めていたので、そのとおり翌日に38度前後の熱が出てもほとんど慌てなかった。以前の時と同じように座椅子に座ってテレビを観ていただけである。1日持ちこたえれば何とかなるとじっとしていた。
 世間では副反応という言葉が流行語のように飛び交い、熱が出たら無理せず解熱剤を服用してくださいとテレビなどで頻りにアナウンスされていた。38度程度で解熱剤などを飲んで下手に胃を荒らすくらいなら、少し辛抱していた方がいいのではないか。私は個人的にはそう感じていた。
 接種した後、当日も翌日もどうしても働かざるを得ない自営業者や、家事や育児を誰かに任せられない人たちなどは、休みたいけれど休めないという葛藤があって、そこからイライラ感が募るのではないか。そういう理由もあって、いざ2回目、3回目の接種となると過剰に嫌がったりするのではないだろうか。副反応を素直に受け止められる余裕のない立場の人たちが、2度目、3度目の副反応を酷く怖れているような気がした。若者層が3回目の接種を敬遠している実態には、副反応が出てもじっとしていられない、じっとしていたくない心理が働いている場合もあるだろう。じっとしていられる無職の年金暮らしの高齢者には、少しの辛抱があれば解熱剤などは不要だと思った。

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