香辛料の唐辛子は、関東では七色唐辛子と呼ぶのが普通だった。略して七色と言えばこれをさしていた。これは子供の頃の記憶にはっきり残っている。私の父親はそう呼んでいろいろな料理に振りかけていた。
今では七味唐辛子の呼び方の方が一般的になってきているようである。七味から派生した一味の唐辛子もよく使われている。エスニック料理のブームに乗って、辛いものが流行り出し、これに乗って一味唐辛子も登場したのではなかろうか。これは私の推測である。なお、一色(ひといろ)唐辛子とは決して言わない。
さて、昨年の春「令和川柳選書 ほぼほぼとほぼ」を上梓して川柳仲間に何冊も贈呈したが、ある大阪の方からお礼の手紙が送られてきた。ハガキみたいな体裁になっているが、七味唐辛子の薄い紙袋の表に宛名、差出人、文面が書かれている。洒落たやり方の礼状だと思った。
早速、開けて使ってみると山椒が効いたあまり辛くないタイプの七味唐辛子だった。そしてこの味は無性に懐かしく感じられるものだった。
実は20年近く前、七味唐辛子に凝った時期がある。東京への出張の帰りは東武線の始発駅である浅草に必ず寄る(そして居酒屋に入る)。偶然、仲見世通りで七味唐辛子専門の店を見つけた。並べられた商品を眺めると、大辛・中辛・小辛のランクで揃えられている。試しに買ってみるかと、小辛を選んだ。そうすると店員さんが、小辛は余り辛くないのでほんとにそれでいいのかと念押ししてきた。私はスーパーで売られている大手メーカーのただ辛いだけの七味唐辛子に些か飽きていたので、それでいいですと答えた。なお、他のお客さんのほとんどは大辛か中辛を指名していた。
家に帰って使ってみると、さほど辛くない代わりに香辛料としてのいろいろな風味が強く感じられた。これを買って正解である。折にふれてたっぷり振りかけ、一人楽しんだものだった。そして東京に行くと度々買い求めた。そんなマイブームがあったのである。
そのブームが去って、久し振りに今度は大阪から小辛の七味唐辛子が我が家の食卓にやって来た。癖のある山椒の舌ざわりに40代の自分のことも俄かに思い出された。
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