一昨年に老母が亡くなって独居生活が始まったが、年金受給者としてのライフスタイルにはほとんど変化がない。強いて言えば、洗濯する回数が減ったことぐらいか。以前は1日置きに洗濯機を回していたが(これは専業主婦だった老母が最後までこだわっていたことである)、今は4日に1回程度である。食生活は一応朝昼晩と簡単な料理を作って食べている。経費の嵩む外食はなるべく避けている。
こんな暮らしを振り返ってみて今更気づくのは、新聞の朝刊を一日に二度捲るようになったことである。それ以前は朝一度読んだら、余程暇にならない限りは改めて紙面を捲るようなことはしなかった(地方暮らしなので夕刊は購読していない)。日中や夕方になって最後のページのテレビ番組欄を眺める程度だった。
定年退職して朝がゆっくりになると、落ち着いて新聞を読めるようになった。毎日朝食後に30分程度の時間をかけて一面から新聞を捲り始める。30分という長さは洗濯に要する時間に重なる。朝食後に洗濯機のスイッチを入れて新聞を読み始める。最後の脱水が終わって洗濯機がピーと音を鳴らす。かつてはそれに合わせるかのように新聞を読んでいた。
お昼は老母と茶の間で食事していたが、いつもテレビを観ながら箸を動かしていた。独りになってもそのスタイルを続けていたのだが、冬場になって、一人だけで入る炬燵の電気代が勿体ないと思うようになったのである。我が家には暖かい縁側がある。そこに行けば暖房は不要。明るいので照明の電気代もかからない。そんなことに気がついて、持ち運びが出来る小さな座卓をお膳代わりに用意し、そこで昼食を摂り始めた。そうすると茶の間のテレビは観られない。それで仕方なく新聞を持ち出してきて二度読むようになったのである。
二度読みと言っても、1ページの紙面のほとんどを使った特集記事を改めてゆっくり読むことが多い。政治経済、社会福祉や日常生活の話題、先端科学の動向など、何かに焦点を当てて論じている署名入りの長文は、かつては斜め読みが精々だった。面白そうな内容のものであっても、面倒くさがって読み飛ばしてしまうことが多かった。しかし箸を動かしながら視線を落として丁寧に読み始めるとこれがなかなかおもしろい。為になるものもある。そんな読み方をしながら、二度読みに20~30分をかける。気がつけば、月々の購読料の元をしっかり取っている、いや勉強の月謝を納めているような感覚でもある。
ちなみに夏場になると縁側も暑くなるので、畳の部屋へ引っ込んで食べ、同じように新聞を読む。照明を点けたくないので茶の間には移動しない。窓を開けて暑さは凌ぐ。
全国紙と言われる新聞を一通り丁寧に読もうとすると、大体1時間前後はかかるのではないか。必要最低限の情報量を得ようとして、忙しなく斜め読みする生活では必ず記事の見落としが出てくる。1時間かければそれはなくなるだろう。特にネットのニュースとはひと味違う内容の特集記事は、ネットより地味に思われるかもしれないが、その分客観性が担保されているという印象が私にはある。
新聞よ、有り難う。書いて印刷して配って、毎日ご苦労さまです。楽しく読ませていただいております。
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