NHKのEテレで「ヴィランの言い分」という番組が放映されている。毎週観ているが、結構勉強になる。生き物の構造や機能、そこから分泌や排出されるものにはすべて意味がある。逆に言えば無駄に出来ているものなどない。無意味や無駄どころか、人類の敵(ヴィラン)に思えるような存在も、人間の方が勝手にそのように誤解しているだけで、実は有用なものも多い。それなりの存在理由と価値がきちんとある。30分間のこの番組は、いつもそれらの謎や疑問を分かりやすく解説している。八嶋智人がMCを担当し、その軽妙な語り口も見事で引き寄せられる。
毎回楽しく視聴している中で、先日のテーマ「鼻水」は大変勉強になった。また30年近く前に私が患って体験した病気のこともまざまざと思い出させてくれた。
小学校の1年生の時から私の娘はスイミングスクールへ通っていた。毎月の最終日曜日は屋内プールを開放していて会員の家族でも無料で泳ぐことができる。私も毎回それに楽しく参加していた。ある年の12月、年末も押し詰まった日曜日、その日もプール開放日だった。何回もあった忘年会の疲れが少し出ていたのか、風邪気味な感じもしていたが、娘と一緒にプールのある施設へ向かった。娘も毎回楽しみにしていたので、少々体調が悪くても付き合ってみようという気持ちになるのである。
準備運動をして一緒にプールの中に入る。いつもよりちょっと冷たく感じる。やはり風邪をひいていて熱があるのかと、ふとそのことが頭を過ったが、とりあえず娘と泳いでひとしきり遊んだ。それからである。家に帰ると熱っぽさがひどくなっていた。しかし医者にかかるのは面倒くさい。仕事を休んで寝込むほどではなかったので、数日我慢していた。そのうちに年末・年始休暇へ入ってしまった。お正月を迎える。毎日酒を飲みながらも咳と痰、それに鼻水の症状が続き、微熱も長引いているようだった。これはさすがにまずいと、近くのドラッグストアで、それらに効く風邪薬を買い求め、毎日服用するようにした。
熱はまず収まったが、咳、痰、鼻水が一向に改善しないくて辛い。これを何とかしようと顆粒状でスティックタイプの薬を買って服用すると、痰と鼻水がとりあえずは収まる。しかし体が温まってくると今度は咳が止まらない。夜中が特にひどい。咳が収まると今度は再び鼻水が流れ出し、鼻詰まりを起こす。ものすごい量の痰も出る(尾籠な話しで恐縮である)。
鼻づまりは右と左で交互に起きる。夜中に右の穴が詰まると体を左側へ寝返って、詰まった右の鼻を上にする。重力の法則によって詰まりがいくらか改善されると自分なりに考えた訳である。しかし時間が経つと今度は下になっている左側が詰まり出す。仕方なく右側へ寝返って詰まった左の鼻を上にする。そんなことを夜が明けるまで何度も繰り返して寝ていた。そしてこれが何日もずっと続いた。
年末年始の休日が明けた1月4日は一応出勤したが、咳き込み方があまりにひどい状態だったので、意を決して職場(私立医大)の呼吸器内科を受診することにした。外来では抗生剤や気管支拡張剤などを処方され、それらを指示通り服用したら次第に回復していった。
数日間の苦しみだったが、鼻詰まりが右と左で必ず交互に起きていたことが実に不思議だった記憶が残った。しかし今回の「ヴィランの言い分」を視聴して、30年近く前のこの謎が解けたのである。
鼻にある左右の穴には、自律神経によるネーザルサイクルという生理現象があり、2~3時間おきに穴の奥が部分的に交互に閉じたり開いたりする。普通はそれに気がつかない。風邪をひいて大量の鼻水が流れ出すと鼻詰まりを起こすが、このサイクルによって、詰まる穴が交代で入れ替わるのである。寝返りを打っても打たなくてもそれは関係ない。右の穴が詰まったのは右に一方的に鼻水が流れて固まったのではなく、どちらかというと堰き止められてそうなる訳である。しかし人間の意識では、鼻水で詰まったと意識してしまう。勘違いである。
うーん、まさしくその交互の詰まり方を30年近く前の私は毎晩体験していたのである。ちなみにテレビでは、左右の鼻の奥が部分的に交互に開閉することによって空気の流れる量が均等でないことを一般人の実験で見せてくれていた。自分の鼻の穴の二つが交代で働いて空気の入れ替えを作業を行っていることに気づいている人間は、一体どれくらいいるだろうか。少なくとも私には驚きの事実だった。
人間の思い込みとは凄いものである例を更にもう一つ挙げる。膝の痛みのことである。私はジョギングをやり過ぎて膝を痛めたことが何度もある。鎮痛剤の湿布薬を貼ったり、サポーターを巻いたりしてその都度対処する。痛みを感じた時は膝が外れるような感覚に襲われる。軟骨がかなり減っているのではないかと実感する。
これも医学的に調べると、どうも軟骨の擦り減り方と痛みはあまり関係ないらしい。しかしそのように思い込んでしまう。自分の頭の中で、膝が痛いというのは勝手に軟骨の擦り減りをイメージしたがるのである。これは勘違い。そもそも大方の人間は加齢によって膝の軟骨は擦り減るようになっている。痛みはこれと直接的な関係はないらしい。医学番組で教わった話しである。
鎮痛剤は、まさに痛みを鎮めるだけで、軟骨のところが改善された訳では決してない。だから痛みは再発する。人間は、自分の体の仕組みや病気の絡繰りについて思い違いしていることが多い。だから人類は長い歴史において怪しい呪術や宗教に縋っていたのだろう。
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