テレビの料理番組を何気なく観ていたら、ポテトサラダなどに使う茹でたジャガイモの皮に関する上手な剥き方を教えていた。熱湯で茹でた後に冷水に浸すといとも簡単に剝けるということだった。この絡繰りは、ジャガイモの皮と本体は熱膨張率と収縮率が異なり、これによってズレが生じることからそうなるらしい。どちらが冷水で早く縮んでしまうのか詳しくは承知していないが、とにかく剥きやすくなる。早速おでん料理で試してみた。
私は、おでんの種にジャガイモと茹で卵を必ず入れる。両方ともよく煮染まった(この言い回しは方言らしい)ものを熱々のままで食べると実に旨い。だから私にとっての必須アイテムなのである。
おでん種として使う茹でたジャガイモの準備は、まずよく洗った丸ごとのジャガイモを鍋で5分程度茹でる。当然イモ本体の中心までは茹だっていない。しかしそのまま取り出して冷水に浸す。ジャガイモが冷めてから皮を剝き始めると、物の見事にするりするりと剝けてくる。それから包丁で適宜分割するように切る。そしておでん鍋に入れて完全に火が通るようにしてぐつぐつと他の種と一緒に煮込む。次第にジャガイモも柔らかく煮えてくる。まあ、これだけの作業である。
以前は、茹でる前に包丁で皮を剝いていたが、包丁だと分厚く剝いてしまうので勿体ないなあとかねがね思っていた(少ししみったれているか)。これなら無駄にするものが完璧に無くなる。
さて、熱による膨張と収縮の原理は他でも応用できそうであることに気がついた。長年我が家で愛用しているフライパンはこびり付かないこと(フッ素加工)を謳い文句にしているものだが、ずっと使っているとその機能もかなり衰えてくる。餃子を焼く際に、以前は焼き上がるとすんなりに取り出せたのだが、今はこびり付く。しかしある時、焼き上がってすぐに皿へ移さず数分して取り出すと、餃子がパカっと剝がれるようにして取り出せた。当初これは不思議なことだと感じていたが、ジャガイモとその皮の膨張率・収縮率の違いの原理と同じような現象が関係するのではないかと気づいた。高三の受験生の頃は私立文系クラスで大して物理の勉強はしていなかったが、私の乏しい知識による物理学的な推論(些か大袈裟か)は多分間違っていないと思う。冷めた時の収縮のズレがフライパンと餃子にも起きているのであろう。
因みに鉄製の昔ながらのフライパンでこびり付かないように料理するコツは、調理する前にとにかくフライパンを思いっきり熱く、熱ーく焼くことである。それから油を垂らして再び熱ーく焼く。そういうことをした上で調理すると、目玉焼きや卵焼きは勿論のこと、焼きそばやチャーハンでもこびり付かない。これは大学生の頃に下宿生活で偶然発見したことである。これを知った時は、四畳半という狭い空間世界の中で大いに自己満足した記憶がある。
なお、おでんに入れるもう一つの大事な種である茹で卵のことであるが、これは茹で上がって冷水にすぐ浸しても殻はうまく剥けない。それではどうするか。答えは簡単。古い卵を使うことである。買ってすぐの卵は不可。購入後1週間や10日程度経ったものは、茹でればどんな卵でもパカっといとも簡単に、おもしろいように殻は剝ける。冷水に浸す必要もない。熱いままでも冷めても、パカッと剝ける。茹でたばかりはかなり熱いので、まっ、普通は冷ましてから取りかかるだろうが…。
味噌汁に卵を入れる方は多いと思うが、生卵を割って鍋に入れると必ず底に沈んでこびり付く。これを防止する方法がある。出来上がって沸騰している味噌汁に卵を落としてからすぐに火を止めると、数分でこびり付かず半熟の卵となる。ただし半熟は嫌だ、固茹ででないとダメだという方にはこれは向いていない。そういう方は毎度鍋にこびり付くのを我慢して調理するほかはない。
最後に思い出したのは、晩酌の際、いつもお銚子に入れたお酒を電子レンジで燗して飲んでいたが、お銚子の首の細くなった所まで注いでそれから温めると、水位が数ミリ程度高くなっている。もちろん酒という液体が膨張したことによるものだが、これを娘が小学生だった頃に実験して見せたら、手品のように受け取って大いに驚いてくれた記憶がある。膨張や収縮の概念がまだ理解できていない子供の年齢では摩訶不思議な現象に思えたのであろう。なお冷ますと水位は元に戻ることも教えてやったが、これは娘の前で実証しなかった。当たり前のことだが、酒は熱いうちに飲んでしまうからである。手品の第二幕を見せるために、少し堪えて燗冷ましした酒を飲むというようなことはしない。
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