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 昭和40年代、自動車産業はトヨタと日産の2強の時代だった。デザイン(外観)の良さでは日産がリードしていた印象がある。昭和46年に、日産のブルーバードに上級クラスのブルーバードUが新たに登場した。トヨタがコロナのほかにさらにそれより格上のコロナマークⅡを先行して発売していたので、それに対抗したのかもしれない。テレビのコマーシャルでは「UアップU!」と叫んで、りんごを両手の指先(親指)を使って真っ二つに割るシーンが盛んに流された。
 当時中学三年生だった私は、あんなにうまくりんごが割れるのかどうか、クラスで友達とよく議論したものだった。
 ある時、クラス仲間の家に何人かが集まって遊んでいると、一人がテーブルの上にあるりんごを目にして、コマーシャルのように真っ二つにしたいといきなり言い始めた。
 みんながそれは無理だからするなと制止したのだが、どうしてもやりたいと言い張る。こちらの言うことをなかなか聞かない。仕方なく諦め、そいつが指先で割ることにいよいよ挑戦することになった。誰もが目を見張る。失敗したらりんごが粉々になって台無しになる。勿体ないことだ。多分親にばれたら叱られるに決まっている。
 そして当人が両手の親指に力を込めてりんごの頭の凹みから割ろうと試みる。何と見事に真っ二つの形で割れてしまったのである。驚いた。りんごは細かく砕かれず結果的には無駄にならなかった。この記憶が私の頭の中にずうっと残っていた。
 りんごについては、このほかに白雪姫の物語に出てくる毒りんごの話しが印象深い。子供心に、毒の入ったりんごを食べさせるということが物凄くスリリングで怖かった。意地悪な継母の王妃がりんごを半分にして、片方だけに毒を仕込む。毒のない方を美味しそうに食べてみせて、毒入りを食べるように白雪姫を唆す。恐ろしいシーンである。
 りんごを二つに割るという行為には、白雪姫の物語とブルーバードUのコマーシャルの記憶がいつも重なって甦る。纏わりついてしまう。私にとっては、単に二分するだけということではないのである。
 そんな経験がベースになって、タイトルに掲げた句が出来上がったのである。蜜柑やバナナの皮を剝いただけでは愛憎は生まれない。やはりりんごなのである。甘さと酸っぱさの程よい兼ね合いを考えると、梨でもダメなのである。

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