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 川柳仲間にクレーマーがいた。市役所などに電話してよく文句を言っていた。そしてそれを自慢気に話していた。聞かされる方は、一応頷きながらも内心『よくやるよ』と半ば呆れることもしばしばだった。
 当人は自分なりの信念や道理に基づいてクレームを発信しているのだろうが、どうも物事を冷静的かつ客観的に眺めようとする視点がやや欠けている面があった。一本気に見える性格も、その言動を観察していると随分勝手なところが見受けられた。
 川柳大会などに参加するとそれが顕著に表れていた。出句した自分の句が披講で没となれば選にすぐイチャモンをつける。合計の得点結果で上位入賞にはならず、下位の方に入賞していてもそれでは不満なので、表彰式には欠席して早々と家に帰ってしまう。仕方がないので私が代理で賞品を受理し、後で本人に手渡したことが何度かあった。
 ここらあたりまでは、まあ仕方がないかなと思っていたのだが、忘年会や暑気払いの飲み会の時の態度がよろしくなかった。居酒屋などでやる場合、アルバイトと思われる若い店員に対して何やかや文句をつけて威張るのである。例えば、最初に注文をとる際に間違いがないか確認のために店員が内容を改めて復唱しようとすれば「一回言ったのだからもうその必要はない」とか、駄々をこねるようなことを言って困らせる。折角の宴会なのだから和やかに進めたいのに、出鼻から変な緊張感が走る。白けそうになる。こういったことが飲み会の度に繰り返された。
 宴会の幹事を引き受けたがるのでいつもそれを任せていたが、食べる料理の注文も仕切りたがる。自分でメニューを見て勝手に注文し、それ以外の注文を受け付けない時があった。さすがにそれはまずいと、私も注意したが、どうも彼の考えは注文した料理が残ると勿体ないから自分ですべて決めたがっているようなのであった。子供ではあるまいし、それぞれ注文する者は自分の胃袋のキャパを考えながら料理を選んでいる訳である。全く以て呆れる態度というほかはない。
 いい歳の割には自己チュー的でかつクレーマー的な彼の言動を眺めていて、私はふと気がついた。威丈高な口のきき方をする時に、言いやすい相手を選んでその人をターゲットにしているのである。市役所に抗議する場合、職員は話しを承って誠実に対応しようと努めるだろう。丁寧な口のきき方になる。それを分かっているから語気を強めて言い張ることが出来るのである。居酒屋のアルバイト店員へのものの言い方も、相手が強く出ないことを承知しているから、いきなり喧嘩腰にも見えるような態度がとれるのである。
 これはどう考えてもずるい。卑怯である。最近、カスハラ(カスタマーハラスメント)などという言葉が出てきたが、そんなことをやりたがる輩は、そういうずるさと卑怯さが根底にある。喧嘩は対等な立場でやることで初めて成立する。自分より強い相手を選んで喧嘩して来いと言いたくなる。
 さきほど一本気に見える性格と言ったが、それも一皮剝けばそんなものなのである。さらにもう一皮剝けば弱気で小心者なところも覗かせる。そして権威には滅法弱い。うーん、こういうタイプの人間は結構目にする。
 川柳を詠む場合には自分を客観視しなければいけない。自分の性格や根性は死ぬまで治らない。そう開き直っていいだろう。特に人生の大半を過ぎた高齢者となったらとても無理である。しかし、己の性格や根性の弱点を冷静に観察して認知することは何歳になっても可能である。そうすることで詠める川柳はいくらでもあるはずだ。自分を題材にした句は無限にあると言ったら言い過ぎだろうか。クレーマーが己のクレーマー的な性格を分析すれば、新たな視界が開けるような自己認識が可能となり、いくつもの佳句が詠めるのは間違いない。
 さてクレームとクレーマーに関連して、数年前にあった私自身の経験について次回は載せることとしたい。

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