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 「患者よ、がんと闘うな」を著して一躍有名になった近藤誠さんが8月に亡くなった。この本は平成8年に出版され、かなりセンセーショナルに紹介されてベストセラーになったものである。
 近藤さんのメディアに発信する考え方は、医療のいろいろな方面の常識についてある意味で相当過激に否定している。私は医療の専門家ではないが、雑誌記事やネット配信で繰り出される近藤さんの主張の見事なまでの小気味の良さにいつも感心し惹き付けられていた。読み進めていくと、とにかく痛快なのである。正しいかどうか、それを信じるかどうかは別にして、現代の医療というモンスターに立ち向かって、一人敢然と吠えるような姿は素直に凄いといつも感じていた。
 ただし、近藤さんの話しの内容はいつもアンチテーゼばかりであることにも気がついていた。アンチテーゼ(反対命題)は哲学用語で、テーゼ(命題)に矛盾して対立するものである。そしてテーゼを否定したアンチテーゼをさらに否定して止揚し、ジンテーゼ(総合命題)が生まれる。以上はヘーゲルの弁証法の考え方であるが、近藤さんの巻き起こす論争から、少なくとも私にはジンテーゼが見えてこなかった。近藤さんの理論は素人なりに理解できても、それでは自分はどう健康的に生きるか、病気になったら自分はどうするか、どういう医療サービスを受けるのがいいのか、そこにうまく引き寄せて考えさせてくれるものが少なかったようなのである。
 これが残念だった。73歳で亡くなられたが、もっと長生きして自らの理論の正しさを自らの寿命の長さで示してもらいたかった。アンチテーゼを唱え続けたご自身の生き方そのものがとにかく激務だったのかもしれない。合掌

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