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 過日、東京で川柳関係の会議があった。会議前の雑談中、某メディア系列で川柳の通信添削講座を長く担当している指導者から、ここ数年で受講者が激減しているという話しを伺った。ショッキングなことである。そしてそれを聞きながら、私は「2007年問題」のことをふと思い出した。
 話しは古くなるが、私は川柳研究会「鬼怒の芽」の第113号(平成18年5月31日)の「あとがき」に、以下の文章を載せた。

「四月に行われた○○川柳大会(原文の固有名詞は伏せる。以下同じ)の結果誌をめくっていたら、開会の会長挨拶の中に『○○県川柳協会は、団塊の世代が定年を迎える二〇〇七年以降、県内の川柳人口を増やすいい機会として、各種の勧誘活動を始める云々…。』というような趣旨の文章が載っていた。世の中のスピード以上に高齢化が進んでいる川柳界を若返らせるためにも、還暦を迎える世代に川柳の面白さを広めるのはいいことである。さて、それより十年ほど若い私が定年となる十年後はどうなっているだろうか。定年後に川柳を趣味とする者はいるのか、ちょっと心配である。昭和三十年以降の生まれは、物心ついた頃には既に茶の間にテレビがあったビジュアル世代であり、短詩型文芸などに興味を持つのか、いささか不安な面もある。会員が四百人を超える○○川柳会に入会して十数年になるが、私の入会後に私より若い人が入った話を聞いていない。私は今でも会員の中で最年少ではないかと思う。」

 「2007年問題」という言葉も既に黴が生えたような流行語になってしまったが、1945年(昭和20年)の終戦直後から生まれたベビーブーマーの団塊世代が還暦を迎え始めるということは、前年の2006年当時、大きな話題となってメディアを賑わせていた。
 この文章の中で、昭和30年以降生まれの世代のことをビジュアル世代と私は勝手に呼んでいたが、ビジュアルとは、物心がついた頃には既に茶の間にテレビがあっただけではなく、漫画も存分に読んで楽しんでいたことも含まれている。親から、漫画ばかりを読んでいると馬鹿になると小学・中学生の頃はよく注意されていたが、少年少女の漫画雑誌は既にもの凄い人気で売れ始めていた。
 こういうあまり文字を読まない世代は、小説などの文芸にも興味を示さないし、ましてや短詩型文芸などには見向きもしないというのが世間の実態であろう。テレビや映画のみならず、その後普及したビデオデッキの便利さ(録画)、楽しさ(レンタルビデオ)にもどっぷり浸かっている。
 そういう世代が順次60歳の定年(2017年頃から)を迎えて、いくら川柳へ誘ってみてもなかなか興味を示してくれないのではないか。わざわざ句会などへ出向き、座の文芸を楽しむなどということは想像すらできないのではないか。世の中にはおもしろいことが他にもっとたくさんある訳である。私は同世代の人間として、2007年問題とは別にさらに10年後の2017年問題を既に危惧していたのである。
 私のような36歳で川柳と出合い、生涯の友はこれだとすぐに決めてしまうようなタイプは奇人変人のカテゴリーに入れられてしまうだろう。そのように括られても私はもう慣れっこで平気の平佐である。同世代から特異な存在に見られるのは致し方ないことだととうに観念している。
 冒頭の川柳講座の話しに戻ると、これから一気に川柳人口が減少に向かっていく悪い予兆を感じた。平均寿命が延びて高齢者人口の方はさらに増えていくというのに、短詩型文芸にはなかなか興味を持ってくれない。NHKラジオ「文芸選評」の川柳コーナーは2年前になくなってしまった。それは、この状況を反映した結果だろう。
 2007年問題を受けて、そもそも会員を増やせた吟社があったのだろうか。そんな嬉しい話しを少なくとも私は聞いたことがない。
 3年前にFacebookを始め、現代川柳を広めるために一応3,300人ほどの友達を集めた。内訳としては、短歌や俳句をやっている方が圧倒的に多い。SNSをやっている川柳作家は少ないのだろう。短歌・俳句の番組はNHKテレビで毎週放映されているのを視聴しているが、入選作品を見ると、若い層からの投稿がある程度あることが判る。司会進行を担当する方が若いタレントや俳優・芸人なのも若い層をいくらかは惹き付けているのだろうか。講師の先生も若い方を大胆に起用している。SNSにもこれが反映されているのだろう。短歌・俳句の方が確実に世代が繋がっていると考えるのは私のバイアス、僻みだろうか? 川柳が気を吐いているのは、サラ川と企業などが募集するテーマ川柳が精々と言ったら言い過ぎか。でもちょっと淋しい。いや、うーんと淋しい。
 物心ついた時にはテレビが茶の間にあったということ、これはそれ以前とそれ以後とでは大きな違いなのである。そういう世代が定年になり、再雇用とか再任用とかで65歳まで働けるとか、今後さらに70歳にまでそういったことが引き上げられるだろうとか、そういった話題とは別に、ビジュアル世代、さらにネット世代・デジタル世代と続く人達が短詩型文芸を趣味にすることは難しくなっていくことは間違いない。Z世代が世の中の主流となるような未来が来たら、川柳にとって、それはもうどんな悲惨な状況になるのか想像も出来なくなるだろう。でも私は頑張りたい。

 

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