40歳になってから、毎年人間ドックを受診するようにしている。職場での健康診断では何かもの足りず、またドック受診には職場から費用への補助制度があるので続けていたのである。退職した現在でもドックへは毎年行っている。
40歳半ばごろから尿酸値が高くなってきた。ドックの検査値はイエローゾーンだったが、面談で運動不足を指摘された。以前、小学生の娘が食欲不振になった時期があり、近所を一緒に散歩していたことがあった。それを急に思い出して、夕食後の30分程度一人で歩くことを始めた。やり始めると案外楽しい。足の裏からの刺激で脳が活性化され、高揚感も湧いてくる。寒くても暑くても、億劫がることはなかった。時々途中で行きつけのスーパーに寄って買い物をすることもあった。
今でもはっきり憶えているのだが、始めて2年ほど経った平成14年の夏のある日、いつものように散歩へ出掛けたのだが、その夜の夕食時に実は缶ビール(正確には発泡酒)を1本飲んでいたのである。仕事がきつかった日はそういうふうに飲むことが偶にあった。
少し酔いが回っていたかもしれない。それでも散歩に出かけ、途中でスーパーに寄り翌朝食べる食パンを1袋買った。いつも食べている食パンとは違った商品を買った。店を出てレジ袋からパンを取り出してどんなパンなのかと歩きながら眺めていると、ちょっとした段差(おそらく10cm弱)でよろけて見事にこけてしまった。左足である。その後痛みはなく歩き続けることが出来た。家に着いてから風呂にも入り、明日には治っているだろうと床に就いた。
翌日は長野の方へ車で行く出張が入っていた。同僚の車に乗せてもらうことになっていて、早朝わざわざ我が家へ迎えに来てくれた。その時既に足が痛くなってきていた。出張先では、車を降りてから満足に歩けない。引き摺るようにして歩を進める。これはヤバいと思いながらも仕事の面談を終えて何とか出張から帰って来た。
次の日、もうこのままでは無理だろうと判断して有給休暇を取り、病院の整形外科を受診することにした。レントゲンを撮ると、単なる捻挫ではなく、左足の外側の踝に罅が入っているとはっきり診断された。即ギプス装着。1か月以上は固定される。初めての松葉杖生活。松葉杖は、使い始めると腋の下が案外痛い。風呂は片足を上げて入浴。夏の暑苦しさの中、満足に体も洗えない。
土日の休日も外出するのが億劫になり、自宅の暑い部屋の中で過ごす。テレビを観続けていたが、いい加減に飽きてくる。これを毎週繰り返し、あまりの退屈さに一人で車を運転して目的もなく田舎道を走ることにした。長閑で落ち着く一人の時間である。これが癖になり、毎週ハンドルを握るようになった。
娘が中学1年生になっていたが、夏休みはどこへも遊びに連れて行けない。骨に罅が入る前の休日、奥日光の戦場ヶ原を一緒に歩いたのが唯一の旅行。辛うじて夏の思い出になった。もっとも中学生になると親との旅行より友達と出歩くことの方が楽しいようで、父親との距離感も既に生まれていた。だから、どこにも連れて行けないことにはさほどショックを受けていないようでもあった。
9月下旬、ようやくギブスを外す。久しぶりに対面した左足からチーズのような発酵した匂い、いや臭いが漂った。元に戻ったこの解放感が堪らない。少しずつ歩くことを再開し始めた。もう秋である。今までの1.5倍の時間を夕食後の散歩に充てるようになった。やはり散歩は楽しい。もちろんこれを始めてから尿酸値も既に下がっている。今も散歩は続けている。
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