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 世の中におよそ偶然などという現象があるのだろうか? 森羅万象はどれをとっても必然的なものなのではないか?
 そういう哲学的な議論がある。歴史認識についても必然性を説く場合がある。地球の自然史や人間社会の歴史的進展はどのようなものであれ全て必然的なものと解釈する考え方である。
 もちろん科学では必然性(法則性)を前提に対象を考察することが当たり前である。自然・社会現象は気まぐれ(偶然性)によって起きると説明する考え方は、人間が物事を科学的に認識しようとする立場からは到底受け入れがたいことであり、なんとかそれを否定しようと科学者達は躍起になっている訳である。すべての事象の展開には法則・規則があり、物事の展開は必ず原因と結果の連鎖によって成り立っていることとなる。
 偶然と似ている言葉に突然というのがある。これは認識における偶然と同じものとも言える。単に予期していなかった(認識しようとしなかった)から突然と思える訳である。例えば片想いを続けていた人が、ある時意を決してラブレター(今どきならLINEか?)を相手に出したとしよう。受け取った相手にとっては突然の出来事だったかもしれないが、送った方は必然的(運命的)な行為だったと認識しているのではないか。抑えがたい思いを相手に伝えようとすることは当然(必然)のことである。突然に送られたと認識されたラブレターも事情を聞けば必然性のあるものであることが相手も次第に判ってくる。これは、認識における偶然性(突然)を突き詰めていけば、実は必然的なものと認識できることをうまく言い表わしているプロセスである。
 偶然の出会い(遭遇)によって、恋愛が成立するケースもある。当初は双方とも偶然(突然)の出来事として出会ったが、いい仲になり二人は必然的(運命的)な関係となる。小説的な世界かもしれない。しかしこれも、もし全知全能の神様がいたとしたら、何でもその神様はお見通しな訳であるから、その神様の視座から眺めれば、最初から二人の関係はすべて必然的なものだったと言えるだろうか。
 新型コロナウイルスの感染拡大もロシアのウクライナ侵攻も、是非はともかくその必然性が議論されている。つまり認識の問題という側面である。世界的なパンデミックはいつかはやって来ると予期されていた。また、少なくともクリミア半島併合の頃からロシアの動向は注意すべきものと考えられていて、プーチンはいつかは何かをやらかすのではないかと恐れられていた。それらがそのとおりになった。これら二つのことについてそれぞれに関係性はないが、少なくともそういう懸念があったことは認識していないといけなかったのではないか。ついでに侵攻のことについてもっと言及すれば、ロシアに対して気持ちを昂らせるのもいいいが、今更ながら「クリミアって何?」「ジェノサイド(大量虐殺)って何?」と疑問に思った人がいたとしたら、少なくともそれは社会的な認識(常識)の欠如として問題ありと指摘されても仕方ないだろう。
 人間の冷静さとは、極力必然的に思考することに表れるとも言えるだろうか。齢を重ねていくと、自分の思考の中に必然性が占める割合が増えてくる。人生経験を積み上げて老いていくと、つまらぬことには驚かなくなってくるのである。必然的に物事を考えたがる傾向が強くなってくるということは、それと並行して少しずつ観念しながら死を受け入れる準備を無意識のうちに進めていると言える。悟りの世界に近づいている訳である。

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