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 築60年以上の家に長く住んでいるが、数年前までは家屋修繕の営業マンがいきなり訪問してくることがしばしばあった。屋根や外壁、外構などで気づいたことがあったので修繕したらどうかと言って攻めてくる商売である。人間の心理として、最初は「えっ!」と驚くが、そういう商売のトラブルがテレビのニュースや新聞記事などで取り上げられていることを承知するようになると、これは怪しいと即座に断るようになる。さらにしつこく言い寄ってくるケースもあるので、これからすぐに出かける用事があるとか、近々引っ越しして自宅は売却する予定だとか、嘘も方便の戦略を思いつく。こういうやり方は効果覿面だった。すぐに引き下がってくれる。
 ある時、屋根職人みたいな人がやって来て「お宅の屋根の何処そこが傷んでいる。放置するといずれ雨漏りしてくるだろう」と言ってきた。それほどしつこい言い方ではなかったが、「建築関係の知り合いがいるのでその人に相談してみる」と、いつものように噓をついて断った。それを老母に話したら「何っ!雨漏りだと。すぐに修理してもらわないとダメだ。何で帰したんだ! 」と怒られた。「こういうセールスがやって来たら、詐欺みたいなものだから気をつけないといけない、そういう世の中になったんだよ」と諭したら、老母も一応は納得してくれた。若い時分(昭和20年代)に雨漏りがするような家に住んでいたことがあったと聞いているので、家屋のことについては少し敏感になっていた。だから老母の心配や慌てぶりも分からないことではなかったが、とにかく高齢者だと旨い話しにはスイスイ乗りやすい。いい鴨にされてしまう。とにかく騙されやすい。老母とのやりとりで、どんな時でも人を即座に信用してはいけない世の中になったことを改めて認識して寂しく感じたものだった。
 最近は郵便受けにやたらと便利屋やリサイクル業者のチラシが入ってくる。家財の処分である。眠っている音響機器や家電製品などは無いか。有ったら喜んで引き取るという商売である。我が家には大谷石(宇都宮で採れる凝灰岩)で出来ている2階建ての物置(石蔵)があるので、そういった類の遊休品・不用品が無いこともない。しかし、この家は古い家だから何かありそうだと目を付けられてチラシを投函されるというのも、あまり気持ちのいいものではない。
 便利屋の方の営業項目には、草むしり、庭木の剪定なども記されている。夏を迎えた現在の我が家の庭は些かジャングルのようになってきている。例年のようにシルバー人材センターに剪定を頼む時期になった。草刈りも一応5月にやったが、また伸びだしてきた。いずれにしても拙宅の庭先を眺められて、こういうチラシを郵便受けに放り込まれるのも、家財の処分と同様に少し嫌な気分になる。
 そんなこんなで、今年もシルバー人材センターへ剪定依頼するために電話をかけることを思い立った。自分で草刈りもする気になった。とりあえず便利屋には頼まないことにしよう。

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