今年の2月中旬、関西に暮らす娘夫婦のところへ行った。娘が第2子を妊娠して入院中だったので、上の子の子育ての手伝いみたいなことをするためという、一応そんな名目だった。ホンネは4歳になる孫娘に久しぶり会いたくなっていた、というのが正直なところである。2泊で出かけて3日間たっぷりお相手することが出来た次第である。
初日の午後、孫とパパ(娘の婿さん)と私の3人で地元の水族館へ行った。外のイルカやアザラシなどが泳いでいる水槽やプールを見学してから屋内の展示ゾーンに入った。チンアナゴやカサゴとかの珍魚、さらに熱帯魚などを眺めたが、クラゲのコーナーで孫の足の動きが急に止まった。クラゲの泳いでいる姿に見とれて釘付けになった訳ではない。クラゲの飼育を担当している若い女性の館員が、入館者の目の前でピペットみたいなものを持ちながらずっと何かの作業をしていた。それに孫は興味津々で、カウンター越しに飽きることなくじっと眺めていたのである。30分近く動かなかったので、他のおもしろい魚たちを見ようと言ってその場を引き剝がすようにして離れさせた。不承不承という感じで孫は歩き始めたが、完全に不機嫌になってしまった。その後は大して熱心に展示品を見ることなく出口へ向かった。
後で、無理にその場を離れさせようとしたのはまずかったなと少し反省した。ずっとその場に留まりたいなら、そのままにしてあげればよかった。時間はたっぷりある。私の方は近くのベンチソファーでひたすら待っていて、気の済むまで眺めさせたらいい、と。そして私の方はそれで休憩が出来る。パパは、実際スマホの画面を眺めて上手に時間を潰していた。
子供というのはいきなり何に興味を持ち出すか大人には予測できない。こんなつまらないことをなんでおもしろがるのか、大人にはそう不思議に見えても、おもしろさの次元は子供と大人では全く異なる。またこんな機会があったら、思う存分一箇所に居させてやろう、そう心に決めた。
さて私の子供の頃の経験である。地方の田舎育ちだが、冬になると近くの駅前にたい焼きの露店が立った。確か1個15円だった記憶がある。この15円は高価である。駄菓子屋の商品はほとんどが5円か10円だった。毎日のお小遣いはいつも10円硬貨1枚。つまりたい焼きは1日分のお金では買えないのである。1日我慢して翌日20円に増えたお小遣いでたい焼きを買うというような辛抱も、所詮子供には無理である。何かの時に親にねだって買ってもらうのが精々だった。
学校帰りにその露店を通りかかると、たい焼きは買えないのでその場で焼いていく作業をじっと眺めていた。これが実に飽きない。だから今でもある程度の工程は記憶に残っている。
横向きの鯛の形が縦に4、5個並んだ黒い鋳物があって、それが3、4列程度火力の強いガスコンロの上に据えられている。ガスの炎に当てられ既に鋳物は相当熱くなっている。まず刷毛で油を塗る。ポリバケツのような大きな入れ物には粉を水で溶いた生地(たい焼きの皮になる)が出来ていて、柄杓みたいな容器に汲んで入れる。尖った柄杓の先から生地を順番に注いでいく。一通り終わったら次に餡子を載せる作業になる。左官職人が使う鏝(こて)のような器具で細長く切るようにしてやはり順番に載せていく。最後に餡子の上に柄杓で再び生地を流していく。それから蝶番か何かでくっついている、対称形をした鯛の蓋(これももちろん鋳物)を1列ずつ被せて閉じ、それからひっくり返す。しばらくすると鯛の両面が程よく焼けてくる。熱々のたい焼きが一気にいくつも出来上がる。これが何度見ても飽きない。露店のお兄ちゃんも、買わない小学生を迷惑がっていない。物欲しそうだからといって1個くれる訳でもないが…。
この製造過程ではっきり知ったことがある。たい焼きの皮は、最初に生地を鋳型に流した方が厚い。餡子を載せてその上に生地を流したもう片方の皮は少し薄い。薄いから餡子がいくらか透けて見える。中の餡子の位置に偏りがある訳である。これは両面の皮をそれぞれ焼いてそれから餡子を挟んで被せる今川焼きや大判焼きとは違う作り方である。当時の私にとってはささやかな発見だった。
以上がたい焼きにまつわる私の思い出であるが、孫の話題に戻すと、再来年の大阪万博へは孫と一緒に行くことを予定している。入場したら孫の好きな展示物を厭きるまで見させようと今から覚悟している。
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