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 去年の7月24日のブログに「受験の夏の思い出 | 三上博史ブログ (shinyokan.jp)」という拙文を載せた。今回は、改めて若い頃に経験する受験勉強って何だろうということについて書いてみたい。
 高3のクラスのみんなが大学進学へ向けた受験勉強に頑張っていて、いよいよ出願が近づく真冬の頃、誰かが「今俺は人生の中で一番頭がいい時期に来ている。受験が終われば脳味噌の中の知識の量は下降線を辿るだけだ」と言った。この意味するところは、受験のために知識を詰め込めるだけ詰め込んで(そのほとんどが暗記するだけのものだが)志望する大学に合格してしまったら、その後はすっかり勉強から解放されてもうこんな過酷な経験をすることは人生で二度とないだろう、そういうことであった。周りもすぐに同調して納得していた。何とかして第一志望の大学に合格したい。英単語や年号を一つでも多く憶え、マックスになった時の脳を保持していざ受験本番を迎える。頭の中は今まで勉強したものでパンパンになった飽和状態で学力試験に臨みたいのである。
 振り返ってみると、高校3年生には大学でのアカデミックな勉強というものがどういうものか具体的にはイマイチ理解できていなかった。いわんや、大学を卒業してから働くことで学ぶ社会勉強などというものは全くピンとこなかったのである。もちろん大学入学後に遊ぶいろいろなことについてはいつも空想と妄想を働かせていたが。
 受験勉強とは所詮暗記物のクイズである。テレビ番組でやっているそれに近いものがある。マークシート方式のテストだと、なおさらそう言えるだろう。しかし大学で自分が専攻する分野を選んで学ぶということ、さらに社会へ出て何かのために働くということは、単純化されたマークシートが試す客観的な資質や能力とは関係ないところが余りにも多い。そんなものより主体的な思考力・行動力の方が遥かに重要視される訳である。
 受験生の頃が一番頭が良かった、と自分のことを思うのは大いなる勘違いである。そのことに高校3年生ではまだまだ気がつかない。受験生として高3の1年間を日夜勉強漬けで送る。大学で専門的なことを学びその後卒業して何十年も働いて日々社会勉強する。それとこれとでは比較にならない。比較すべき事柄でもないことに大人になって改めて気がつく。
 それでは1日何時間も夜明け近くまで受験勉強した意味は何だったのか。それは、自分の設定した目標に向けてそういう試練の習慣を若い時期に一度身に着けたということだろうか。だからまたその後の人生で何か猛烈に勉強しなければならなくなった時、受験の頃を思い起こして、それに比べれば大したことはないと覚悟を決めることができるのではないか。
 実は私の場合、第一志望の大学の学びたい学部について、指定校推薦の枠が1名あった。2学期だったか、担任の先生を通してそういう話しはみんなに知らされていた。私は何かつまらないことで妙に物怖じするところがあって、自分には無理ではないかと勝手に思い込んで少し躊躇っていた。時間を置いてから、一応担任のところへ行って相談してみるかと思って、のこのこ職員室へ行った。出来れば指定校推薦で入りたい旨を話すと、先生がじっくりと話しを聞いてくれて、それから一言「もう推薦枠は埋まってしまった。三上、一般試験で頑張ってくれ」と静かに答えてくれた。その時はさほどショックを受けなかったが、その後でクラスの誰が推薦されたかを知った時は愕然とした。模試などで私よりはるかに成績が下位だった生徒が推薦されていたからである。というか、私立文系クラスで一番の成績は断トツで実は私だったのである。何たることか。その後、某受験雑誌社の模試で私立文系では全国で100番以内、栃木県で1位という成績も残した。
 でも立ち直りも早い。そもそも推薦入学などは眼中になかったのだから、さしてこだわっていなかったのである。
 その後、推薦が決まった生徒はおそらく大して勉強もせずに楽々卒業したのだろうが、私の方は受験シーズンが終わるまで、年が明けて2月頃までだろうか、毎日シャカリキに勉強し続けた。勉強し過ぎて、風呂場で貧血を起こして倒れたこともあった。幸い怪我はしなかったが。
 振り返ってみて、秋に推薦入学制度で進路が決まっていなくてよかったと思っている。真冬の模試で東京の予備校へ日曜の朝早く起きて始発電車に乗り込んで行ったこと、2月の受験時は、東京の遠い親戚宅へ前日から泊り込んで臨んだこと、合格発表の時に掲示板を見て一人感激したこと(受験結果は4勝1敗)など、何度思い起こしても懐かしく感じるからである。辛くても結果的にはいい受験時代だったことはその後の人生の糧に間違いなくなっている。

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