結局、片っ端から紐で縛ったり、段ボール箱に詰め込んだり、朝からの作業を続けて二時間ぐらい経っただろうか。
「どんな感じ?結構捗ってんじゃないの。OK、OK」
階段を上がってきた直子の声の調子がいい。いよいよ片づけに着手したので、まずは褒めてやるか、そんな感じで物置に入ってきたのだろうか。着手したことを確認し、それなりの進み具合を見て回ると、さっさと下へ降りてしまった。家の中の片付けのことで、物置までは頭が回らないのだろう。生まれ育った家でもないのだから、嫁に来る前の物に対して淡白なのは当たり前のことだ。悪くは言うまい。
妻の機嫌も持ち直したようなので、ちょっと休憩。中学時代から集め始めた洋画のパンフレット類が目に入った。「ゴッド ファーザー」に「ポセイドン アドベンチャー」、「ある愛の詩」もある。全部で百冊近くになるだろうか。ほとんど変色もせず、映画のヒーロー達が、四十代半ばの僕を見つめてくれる。みんな若かった。僕も若かった。
そんな懐かしさに浸ると、片付けの時間の流れがあっさりと中断され、タイムスリップしていく自分を簡単に許すこととなる。
一通り手にしたパンフレットの一番下に、三越の包装紙に包まれた薄いものがあるのを見つけた。封を開けると、ピエール・カルダンのロゴが入ったハンカチが二点。
こんなもの、どうして残っているのだろう。さっさと使えばいいのに…、どうして二十年以上眠らせていたんだ。そう思ったその下には手紙が隠れていた。
「三上君へ
英米哲学研究の提出レポートを貸してくれてどうもありがとう。おかげで助かりました。ささやかですが、お礼を贈ります。
ところで卒業はどうするの? 私の方は、就職先はまだ決まっていないけど、来年卒業することにしました。仕事はなんとか探すつもり。三上君は?
今年の夏はどうでしたか。四畳半の下宿では相当堪えた暑さだったと思うけど、三上君のことだから、相変わらず涼しい顔して、ヴィトゲンシュタインの研究書でもめくって過ごしたんじゃないの。
それでは後期もよろしく
九月十日
三上奈緒子」
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