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   父の炭酸

                                                                                           川柳作家 三上 博史

 居酒屋の縄暖簾を潜って座席に着けば、メニューを眺める前に「とりあえずビール」。これが昭和時代の注文のやり方だった。今なら瓶ビールではなく生ビールの中ジョッキが主流なので「とりあえず生中○○(二つとか三つとか)」と頼むのがほとんどだろうか。アルコールの嗜好も多様化しているので、最初から酎ハイやハイボールなどを飲む少数派もいる。私個人はカロリーや尿酸値を気にしているので、数年前からハイボール派になった。
 いずれにせよ、最初の一杯は炭酸の入ったアルコールを飲むのが定番である。何故そうなのかをAIに訊いてみると、そもそも炭酸水は冷たく飲むことで喉が刺激されて爽快感が生じ、食欲を増進させるということである。また胃の血管を拡張させて胃酸の分泌が促進され、食べ物を早く腸に送り出す効果もあるという。
 私の父は81歳で亡くなった。晩年は咀嚼したものが気管に入って咳き込んでしまい、食べる気力が次第に失せていった。最期はガリガリに細っていた。大きな病気には罹っておらずただ痩せ衰えて天寿を全うしたのである。それでも亡くなる前には何とか食べようと、明太子や塩辛などの刺激のあるものを口に入れていた。さらに缶入りのサイダーを買い込んで飲んでいた。アルコール類はダメだったので、自分なりに炭酸は喉を刺激することを覚えたのかもしれない。十七回忌を前にそんなことを思い出した。

  炭酸の泡よ亡父は頑張った
            博史

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