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 インフレとは通貨価値の下落をさす。同じ通貨で交換できる物の価値が下がる現象であり、要するに物の販売価格が上昇する訳である。物価高は物を購入するのに、以前より多くのお金が必要となることを言う。
 インフレと物価高は同じことを意味しているが、文脈の中で微妙に使い分けられる。インフレは、かつてよく言われたインフレターゲット2パーセントなどのように、経済現象に言及する場合によく使われる。物価高は個々の商品がどれだけ値上げされたか、そういう家計や生活費の話題の時によく使われる。
 ロシアのウクライナ侵攻などの影響により物価が高くなり始めた。デフレスパイラルが終息し、一応はインフレ傾向となったが、賃金の上昇が追いついていないため、経済状況においては物価高という言葉が依然として使われている。物価が上がって企業の利益が増え、労働者の所得にそれがうまく分配されて消費が伸びる、そういった経済社会の好循環がまだ実現していないから、物価ばかりが上がって生活が苦しくなることばかりが強調される。
 以上、当たり前のことを長々書いてきたが、この二つの言葉のニュアンスの違いと使い分けが気になっていた。
 バブル崩壊後、デフレスパイラルに悩まされていた日本経済がさきほどの好循環の軌道にいつから乗り始めるのか。最低賃金1,500円などと言う言葉も出回り始めているが、実質賃金がしっかり上昇傾向になることは、そう簡単に実現するとはなかなか想定できない。
 インフレは善い言葉、物価高は悪い印象、そんな感じがする。インフレは、毎年2パーセント程度のインフレが望ましいという政策的な議論があるからいい響きを持たせるところがある。物価高という言葉だと、そういう望ましさが感じられない。物の値段が上がることはどんなことであっても生活するうえではあまりいいことではない。どんな物であろうとも出来ればそうなってもらいたくない。だから安売り商法が浸透し、ディスカウント店は繫盛する。物の値段は下がることが善なのである。
 同じことを言っている二つの言葉の響きにズレがある。大所高所から論ずる経済現象のインフレと家計のやりくりに直結する物価高にはどうしても嚙み合わない感覚がある。英語と日本語の使い分けがこんなところに現れているのもちょっぴりおもしろい。

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