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   前略おふくろ様-タバコの効用-

                             川柳作家 三上 博史

 YouTubeで昭和の頃のテレビドラマを時々観ている。今は「前略おふくろ様」(日本テレビ)が気に入っている。東京深川の料亭「分田上」を舞台に、萩原健一が主人公の片島三郎を演じたこの人気ドラマは、私が大学入学のために上京した昭和50年に放映されていたもので、当時は下宿仲間と毎回画面に釘付けで視聴したものだった。
 七〇歳近くになって改めてこのドラマを見直すと、約半世紀前の二十歳前後の自分にタイムスリップしたような錯覚に襲われる。当時の記憶が甦ってきて、無性に懐かしい。
 喫茶店での会話の場面が偶に出てくる。登場人物はタバコを吸いながら話を進める。まずは一本取り出して火を着け、徐に話題を持ち出す。コーヒーを飲みながら本論に入り、吸い殻を灰皿に押し付ければ、話も煮詰まってきてお仕舞いとなる。言葉をやりとりしながら喫煙する動作にもそれなりの意味づけがなされていた。
 昭和時代のタバコはコミュニケーションツールの一つだったのである。喫煙は、一人の時だけでなく人と会う時間においてもそれなりの意味合いがあった。居酒屋のカウンターやテーブルの上に必ず用意されていた灰皿は、酔い痴れた客の喜怒哀楽の受け皿にもなっていたはずである。
 今のご時世では考えられない光景であるが、タバコや灰皿という小道具には脇役の存在感があった。漂い消えていく煙は言葉を超えた台詞を吐いていたように思えてくる。

  百害を説かれ行き場のない紫煙   博史

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