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 下の写真は、我が家の裏庭にある楤の木である。私の背丈(170cm)以上の高さがあって、こんな感じのものが大小10本近く生えている。おそらく最初の1本から根っこが伸び出して自然に増えていったのではないか。根挿しという増やし方があることをネット情報から知ったが、そんなことをした記憶がない。というか、それをやるとすれば庭木いじりが好きだった亡父だろうが、多分やっていないと思う。
 3月下旬から芽が出始めた。昨年は楤の芽を料理して大変懲りた事件(後述)があったので、今年は毎朝芽の伸び具合を小まめにチェックし、食べられるくらいの長さになったら速やかに毟り取って食べている。守りから攻めに転じた次第である(笑)。
 楤の芽はやや苦みがあるが、これに馴れてくると食べるのが癖になってくる。蕗の薹とかセロリとか、あるいはゴーヤと同じかもしれない。癖のある野菜は一度舌が馴れれば何度も食べたくなって、シーズンが終わってしまうと無性に恋しく思うことがある。
 さて、さきほどふれた楤の芽で懲りた昨年の事件(大袈裟な言い方だけど)の話しを持ち出したい。いつもの年と同じように芽が出てきたが、毎日のようには摘んでいなかった。気がつくと何本もの木に芽が伸びて生い茂るように葉っぱがついていた。
 ある日、晩酌のつまみに豚のハラミの炒め物を作ろうとした。肉だけではもの足りないので野菜を何か入れようと考えたが、冷蔵庫を覗くとあいにく使える材料がなかった。楤の芽をふと思いついた。芽ではなく既に葉っぱになったものでも食べて大丈夫だろうとたくさん摘んでみた。中心の茎は既に硬くなっていたので、枝先みたいな周辺の柔らかいところだけを選んでハラミと一緒に炒めた。
 いざ食べ始めるとビールや熱燗にも実に相性がいい旨さを感じる。満足してその日の夕食は終わったのだが、布団に入ってひと眠りした夜中、下腹部に激痛が走った。下痢である。食あたりかと思った。ハラミは充分加熱して料理したはずだが、他に考えられることは何だろう。楤の葉っぱを食べ過ぎた所為か。あまりの量に胃腸がショックを受けてそうなったのかもしれない。
 そんなこんなで何度がトイレに行き、布団の中ではしばらく腹を摩(さす)っていたら何とか症状は収まってきた。とんだ目に遭った。独り暮らしというのは、こういう時に惨めな思いに襲われる。もし腹痛がなかなか治らなかったらどうしようという最悪の事態が脳裡に浮かぶのである。結果的にそれは回避できたが、その後、楤の木に対しては少し警戒感を持つようになった。
 それから1年が過ぎて暖かくなり、またまた楤の芽が生えてきた。そして自分なりに考えて、芽が出てあまり大きくならないうちに味噌汁へ入れて小まめに食べることにした。天ぷらもいいが一人暮らしだと面倒くさいし油が勿体ない。おひたしという手もあるが、何と言っても手っ取り早いのは味噌汁の具である。毎朝、玉ネギかキャベツを入れて一人分の味噌汁を必ず作っている。そのついでに楤の芽も適当に毟って入れてしまえばいい。
 しかしその元気な成長ぶりが昨年と同様に凄い。4月に入って更に暖かくなってくると、芽の伸び方にもスピード感が出る。毎朝観察することが習慣になっているが、それを怠るといつの間にか芽から葉っぱになって広がっている。楤の芽というくらいだから、葉っぱよりやはり芽を調理して食べるのがオーソドックスなスタイルなのだろう。
 芽の段階の茎の部分も適度な柔らかさがあって、アスパラのような食べ甲斐がある。そしてその茎の根元部分をよく観察すると、葉っぱを毟られた後も茎だけでしぶとく伸びていることに気がついた。凄い生命力である。
 先日、夜に雨が降った。翌朝には既に止んでいたが、楤の芽をチェックすると以前に毟った先にゼリー状のものが付着していた。おそらく毟られたところが傷口になり、松脂(まつやに)のような粘液が分泌されていたのであろう。そこに雨滴が落ちてこんな形状になったと考えられる。私が毎日毟り取る所為で、楤の木もその都度痛い思いをしていたことに改めて気がついた。ちょっと可哀そうかな? でもやっぱり勿体ないのでしっかり食べ尽くす予定。それが年金受給者の暮らし方である。楤の芽の栄養成分にはカリウムもたっぷり入っていて、血圧がやや高い私のような体にはいいようである。
 5月末ぐらいまで楤の芽とにらめっこするルーティーンが続く。楤の木とのそんな付き合い方を続ける今年の春である。なお、3年前に亡くなった母は楤の芽を摘んで料理することがなかった。食べる習慣がない家で育ったのだろう。生前は葉っぱが生い茂るまで伸び放題のほったらかしにしていて、鬱陶しくなったら自分で剪定していた。

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