Loading...Loading...

 Web句会「夏雲川柳テラス」(東京)の会員に、発足当初の3年前から会員になっている。1月19日(日)に、同会が年に1回開催するZoomによる川柳大会「迎春白蛇まつり」が実施された。今年で3回目になるが、私は第1回からずっと参加している。当日は会員以外も含めて20数名が参加した。
 事前に出された課題は3題で、1題につき2句を応募フォームから投句する。締め切り後に互選し、大会当日に特選句(「最高!」と呼ぶ)と佳作(「いいね!」と呼ぶ)の中の高得点句の作品の披講が行われた。
 大会が終わればブレイクアウトルームでの二次会「川柳トーク」(飲酒Ok)が待っている。全国各地で活躍している、まだ会ったこともない(今後会うこともない)柳友たちとの楽しい交流の場である。
 私にとっては、数ある川柳行事の中での大きなお楽しみイベントになっている。第1回の時に、名前だけは承知していた川柳仲間と初めてお会いして、画面越しにお喋りできた感動は今も忘れられない。コロナ以前のZoomなどが普及していなかった頃は、まさかそんな出会いがあるなんて夢にも思っていなかったからである。
 さて、当日の私の成績は以下のとおりである。「最高!」が2点句、「いいね!」が1点句になる。「最高!」に入選した作品が数句あり、合計得点も上位に入ったので有り難く賞金(送金は今風にPayPayの電子マネー)をいただいた。

 「バックアップ」
   子育てへ支援は続くどこまでも /最高! 2人・いいね! 2人 6点
   僕もそうだったキャッチャー・イン・ザ・ライ /いいね! 4人 4点
 「しっくり」
   憲法がお肌に合わぬ自民党 /いいね! 5人 5点
   さり気なく愛が伝わる星月夜 /いいね! 1人 1点
 「笑門来福」
   ワッハッハ幸福論などは読まぬ /最高! 2人・いいね! 6人 10点
   団欒はマンネリでいい掘り炬燵 /最高! 1人・いいね! 3人 3点

 課題はどれも新鮮な感じがするものだったが、作句に取り組む上では案外難儀した。そんな中で最後に何とか作れた「バックアップ」の2番目の作品は、サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」を踏まえて詠んだものである。なかなか発想が思い浮かばず、追い詰められてようやく出来上がったのがこれだった。
 野崎孝訳で白水社から発行されたこの小説は20代の前半、確か社会人になって1年目に読んだ記憶がある。ページを捲り始めたら、あまりにも諄い文章にすぐ眠くなってしまった。ところがこれにめげず何とか翌日以降も根気よく読み進めると、俄然物語の展開がおもしろくなってきた。眠気など吹き飛んで夜更かしして最後まで一気に読み終えたくなるくらいだった。
 今ではその内容をほとんど忘れてしまっているが、主人公のホールデンに共感するものがあったのは確かである。結末でようやくタイトルの意味が判明したことも余韻をしっり残した。名作にふさわしく、かつ不思議な小説だと感じた。今でもこの本は家のどこかにあるはずだ。
 50年近く前の読書体験の記憶を踏まえて作句する際に、20数年前に発行された村上春樹による新訳のタイトルを五七五に入れ込むとすんなり十七音に収まることに気がついた。これで「バックアップ」の残りの1句がようやく完成した次第である。
 しかし待てよ。苦労して出来上がった私の作品は互選の際に、この小説を知らない人には呆気なくスルーされるのではないか。うーん、参加者の中に小説好きな人がどれだけいることやら。それもサリンジャーだよ。
 かつて、この本の話題を読書好きの女性の同僚に話したら、私と同様に読み始めて眠くなり、頑張ってみたが途中で断念したとか。私も最初は同じようだったので、そこを何とか辛抱して粘り強く文章を追っていけば絶対におもしろくなるはずだと、その同僚を説得した記憶がある。
 参加者が誰も「いいね!」を押してくれず0点だったらどうしよう。当たり前のことだががっかりする。でも私の心の中には、「バックアップ」をヒントにして思いを込めた作品への自己満足の熱量が持続していた。たとえ分かってくれる参加者が一人もいなくても、とにかくこれを投句に入れようと覚悟を決めた。結果はまさかの4点。4人の方が共感してくれたのである。うーん、素直に嬉しい。
 川柳大会の醍醐味は、自作が特選句になったり、高得点で上位に入賞したりするだけではない。苦吟した作品に対してまず応募段階で自分なりに達成感を感じること、次にそれが分かってもらえる人にしっかり伝わったこと、こういったプロセスを経た句が一つでも入選していれば参加した甲斐が充分あったというものだろう。拙句に「いいね!」を押してくれた4人の参加者に改めて感謝したい。

ポストする LINEで送る ブックマーク
❤️ ひざポン
ありがとう!

気軽にポチっと
どうぞ(無記名)

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Post Navigation

Copyright All rights reserved. SHINYOKAN PUBLISHING illustration by Nakaoka.K