Loading...Loading...

 ついに来てしまった授業参観の日の朝、ぼくの味方になったような雨がまだ降り続いていた。目が覚めてそれを知った時、ベッドの中でひとりほっとした。このまま降り続いてくれれば、午後の授業参観は、国語にへんこうされる。ママの前で、とび箱のとべないぼくを見せることはなくなる。そう考えると、少し変な勇気がわいてきた。
 でも、めざわりなのが家族の中にひとりいる。ぼくのおねえちゃんである。中学一年のおねえちゃんは、小学校の頃から体育が得意で、とび箱でも鉄ぼうでもなんでもできる。おまけにぼくとのケンカも強い。中学生になり、少しふくらんできた胸をからかったりするとケンカになるが、腕ずくでやればおねえちゃんに負けてしまう。そのおねえちゃんは、ぼくがとび箱をとべないことを知っているし、もちろん今日の授業参観はとび箱であることもわかっている。なやめるぼくの心は、完全に見抜かれているのである。
 朝ごはんの時、ママがなにげなく「今日の雨はどうなるのかしら」と、ひとりごとのように言った。ぼくにたずねているようなふんいきではないというのに、ぼくはすかさず「ずうっと降っているよ」と、かくしんを持っているかのように言ってしまった。ママは、ぼくの言い方に少しおどろいたような顔をした。
「テレビの天気予報では、これから雨は上がるって言ってたわよ」
 おねえちゃんが、ぼくの発言をひややかに打ち消した。いやなやつ、そうぼくは思った。でもしかたがない。ゆうべ、おねえちゃんの机にあった日記をかってに読んで、ケンカになった。読んだだけでなく書いてあったことをちゃかしたのだから、ぼくのほうが悪いに決まっている。〈続く〉

ポストする LINEで送る ブックマーク
❤️ ひざポン
ありがとう!

気軽にポチっと
どうぞ(無記名)

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Post Navigation

Copyright All rights reserved. SHINYOKAN PUBLISHING illustration by Nakaoka.K