「働き方改革」という言葉が定着してきたようである。いろいろな業種のいろいろな職種で改善が図られ、まことに結構な話しである。「3K」などと言う言葉がバブルの頃に生まれたが、少子高齢化・人口減少の時代、労働環境や勤務形態などを見直していかなければ日本の未来は更に先細りになってしまうだろう。
このことは医療の現場にも当然当てはまることではあるが、特に若手医師の過酷な勤務状況は依然として厳しいものがある。だから、鬱病などの精神疾患を発症するだけでなく痛ましい過労死や自殺にまで引き起こす事態となり、間接的な要因となって医療ミスも多々発生することとなる。
私は私立医科大学に事務員として長く働いていたので、その現場や医師の処遇をある程度承知している。事務部門は安い給料だが比較的呑気に働けたので、周りにいる他職種の人間の働き具合がよく観察できたのである。その経験から言うと、医師免許にはものすごいメリットがあるということである。医科大学(医学部)または附属病院でこれを持っていると、給料などの待遇面で他の職種と格段に違うことが分かる。
一般的に言えば、公務員に準じて給与体系が定められている公的な事業所では、たとえそれが大学教員や病院医師であろうと、いわゆる基本給というのは他のどんな職種と比べても大した違いはない。しかし医師職には、医師免許を有するというだけで支給される手当がある。免許を持った大学教員であれば、医者として勤務(診療)しようがしまいがこの手当が定額としてしっかりもらえる。そして次に重要なことは、外勤(要するに週1回のアルバイト)が認められていることである。
医師免許を有する教員はとにかく外勤を大事がる。例えば、学内・病院内で予定されるいろいろな会議や委員会の日程調整を行う際に、委員の外勤が重なっていればその日に設定することは絶対に不可能である。融通や妥協が入る余地はない。私は若い頃、これを些か不思議に思っていた。そんなに外勤が大切なのかと…。
しかし次第に判ってきた。外勤でどこかの開業医や個人病院へ行って診療の仕事をすると、10万から20万円の報酬を得られるのである。この額は1か月ではない。なんと1日分である。つまり月に4回ないし5回外勤に行けば、計算上は40万円から100万円を稼ぐことが出来る。基本給と同等またはそれを遥かに凌ぐ収入が得られるのである。品のない言い方をすれば、こんなおいしい仕事はない。ここで私の謎が解けた。
よく知っているある教授(医学部所属ではない)がいて、その娘さんが私立大学の医学部にめでたく入学した。その大学は入学金を含めた学費が高いことで有名なところである。よくそんな大学へ入(い)れたものだなぁと感心したが、しっかり外勤で稼いでいたのだと、私なりに推理した。勿論そんなことは当人に確認していない。でも間違いないだろう。授業はいつも暇そうに受け持っていて、附属病院で週1回の外来診療を行っていた(これに係る手当は驚くほど安い)。本務である教員職と外勤先から得る収入金額が、かなり逆転した数字になっていたはすだ。外勤日は勿論朝から出勤せず、外勤という理由付けは、イコール水戸黄門の印籠みたく当人は扱っていたことを記憶している。
医学部の臨床系主任教授で外勤を隠れて週2回やっていた輩がいた。外勤の行きか帰りかに交通事故を起こし、これが発覚して停職処分となった。あまりのせこさに周囲は呆れた。でも相当稼ごうとしたのだろう。欲の皮が何とも厚い。
医学部を卒業してから義務づけられている2年間の研修医としての期間中は馬車馬のように働き鍛えられているので、勿論外勤のアルバイトは禁止されている。しかし、その後は可能となる。収入がぼーんと跳ね上がることとなる。医師の過労死問題が注目を浴びることはよくあるが、外勤のそういった側面はなかなか話題にならない。メディアには、そこら辺をもっと掘り下げて取り上げて欲しいものである。
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