人は物をもらったり、あげたりしたことをなかなか忘れない。それは高価なものだけに限らない。些細な物でもそうである。
現役時代、昼休み時間などに生命保険や証券会社の外交員が職場をよく訪問してきた。もちろんセールスのためであるが、パンフレットを置いていくだけでなく、時にはいろいろな粗品をくれた。ボールペンやメモ用紙などはよくもらう物の代表だが、意表を突くような物をもってくることもあった。ノベルティ(珍しい、斬新な)グッズとはよく言ったものである。
例えば、小皿や小鉢である。証券会社の女性外交員がくれたものだが、今でも割れずに使っていていくつも食器棚にある。
10数年前に亡くなった父は酒がほとんど飲めなかった。晩年は座卓や炬燵でテレビをよく観ていたが、おやつ代わりに皮付き落花生をよく食べていた。バターピーナッツと呼ばれるものは塩味が強い。お茶請けには、皮付きや殻付きの素焼き落花生がちょうどいい。父は徳用の皮付き落花生を買って来て乾燥剤を入れた缶に移し、毎日少しずつ取り出しては食べていた。どこかからもらった木製の小皿を用意してそこに何十粒かを載せていた。
父が亡くなって、無性に父の真似をしたくなった。晩酌する際に柿ピーをつまんでチビリチビリと酒を飲む。素焼きなどでは塩味がどうしても物足りない。アルコールの友にはバタピーか柿ピーがいい。しかし器は父が愛用していた木製の小皿を引き継ぎたい。ところが、亡くなってから小皿を使おうと食器戸棚などを開いて捜してみたが、一向に出て来ない。みつからない。うーん残念、諦めた。
仕方なく、件の証券会社の外交員からもらったガラス製小鉢を柿ピー専用にして使うことにした。時が経つにつれ、この小鉢にも愛着が湧いてくる。一応、ブランド物でデザイナーの名前が入っている。確かに洒落たデザインではある。父の死後10数年ずっと使い続けていた。
ところで、冷蔵庫が壊れて買い換えた話しをしたが(冷蔵庫が壊れる | 三上博史ブログ (shinyokan.jp)2023年6月1日)、その時壊れた冷蔵庫を移動させ、壁や床の埃やゴミを取り除いていたら、例の木製小皿がひょっこり顔を出したのである。驚いた。懐かしい。ひっくり返して底を見ると、黒マジックの落書きがある。これは小さい時の娘の仕業である。そんなこんなで、ずっと愛用していたガラス製小鉢の方は一旦御役御免となり、この小皿に柿ピーを盛ることにした。
柿の種、ピーナッツを数粒指先で摘まみ口に入れる。そして缶ビールを飲めば少しずつ酔いが回ってくる。素焼き落花生を毎日のように食べていた晩年の父は、摘まみながら何を考えていたのだろうか。ふと思った。
Loading...
















































