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 昨年、母の葬儀の喪主・施主を務め、改めていろいろなことを経験した。
 知り合いで父親が早くに亡くなった方がいる。最近この方と偶々お会いする機会があった。その際に、今まで執り行った法事についての愚痴(相当溜めていたようだった)を私にこぼした。
 法要というものは四十九日、一周忌が無事に終わると、その後は三と七の付く回忌に執り行うのが一般的だろう。七回忌、十三回忌、十七回忌…、と節目のサイクルが続く。
 知り合いは父親が亡くなり、まず菩提寺選びをすることになった。父親の実家の宗派と同じところを家の近くに探し出した。人からの噂では、そのお寺は法事の際のお布施、毎年の墓地管理料や檀家の年会費などが良心的な金額で納められるということだった。迷わずそこに決めたらしい。
 お寺に出向き住職さんといろいろ相談すると、確かにそのとおりで、葬儀の際の戒名などのお布施は施主側が納められる金額で構わないということだった。その後の節目の法事のお布施もお寺からの具体的な金額の提示はなく、志はいくらの額でも黙って受け取ってくれていた。なお、三回忌からは親戚を呼ばず家族だけが集まって内々にやっていたようである。
 数年前に母親が亡くなった。葬儀のお布施は80万円と、父親の時とはがらりと変わってはっきり提示された。10数年前に父親が亡くなった時は50万円だった。1.5倍以上の金額である。大変驚いたが、仕方がないのでそのとおりに納めた。その数年後に父親の十七回忌があった。念のために、納めるお布施の金額をお寺に確認すると5万円だという。これにも驚いた。父親の法事にはいつも2万円を包んでいたのである。何と2.5倍の値上がりである。
 檀家となった当初の良心的な価格対応は何処へ行ったのだろう。愕然としたらしい。父と母の法事が来るたび(10年に4回)に5万円は払えない。知り合いは、今後親の法要の年が回って来る場合、お寺に金額を確認せず、しれっとして3万円をお布施として包んで渡すことに決めたという。そして、ずっと家族だけで法事をやっていたが、今後は塔婆を書いてお経をあげてもらう法要はもうお寺に頼まず、家族だけで墓参りして、線香とお花、お菓子などの御供物をあげるだけにしようかとも考えている、とのことだった。
 よくお寺などで、高級車を乗り回している坊さんがいる。まさに坊主丸儲け、うまいことやって儲けているのだなぁと思ってしまうが、知り合いの菩提寺はそんな高級車を持っていないと言う。檀家の年会費・墓地管理料も最近値上げされたとか。おそらく経営が段々苦しくなっているのではないか、知り合いはそのように推測しているという。
 私はこの話しを聞いて、他人事ではないと感じた。法事に係る経費も年金暮らしにとっては馬鹿にならないものである。非常に参考になる話しだと思った。
 寺や神社の数が確実に減ってきている。後継者不足だけでなく経営難からそうなってきているのだろう。葬儀にかける費用も少額になって来ている。テレビで放映されている葬儀のコマーシャルはどれも安さを売りにしているものばかりである。
 実は20年近く前、親戚の葬儀であまりにもごてごてしたやり方で執り行っているのを目にして、こんなことをしていたらいずれ葬式の価格破壊の時代が来るだろうと自分なりに予想していた。とにかくお金をかけていて、結果的に通夜振る舞いや精進落としの料理なども食べ残して粗末にするようなことをしていたのである。時は移ろい、案の定、私の予想は見事に当たった。
 簡素化でお寺を含めた葬儀業界も大変な時代になった。墓石を扱う石材店の経営だって苦しくなるだろう。墓を建てても、それを維持管理していく家族がいなくなるのである。もちろん、直葬に散骨・樹木葬、墓を建てない永代供養の合祀墓がさらに普及することだろう。坊主丸儲けも先が見えているような気がしている。
 知り合いの話しを踏まえると、お布施の安易な値上げは、簡略した葬儀の普及をさらに加速させるのではないか。お布施の値上げと法要の簡素化の関係は相互に影響し合って負のスパイラルに陥るようなところがあるのではないか。お寺は経営が苦しくなってお布施を値上げする。値上げすれば檀家も法事を質素にしたり、やりたがらなくなる。そうするとお寺の経営がさらに苦しくなってまた値上げする。それならもう法事なんてやらないと檀家も決めてしまう。どっちもどっちという気がする。ネットで葬式の坊さんが探せるような時代である。むべなるかな、という思いである。宗教が衰退して、宗教まがいのカルト教団が栄えるような世の中になることだけはご免蒙る。

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