アリンス国とはアリンス言葉を用いる地域。女性だけの言葉のようです。比較的にわかりやすく文芸的に考えても価値のある者のようです。江戸時代の吉原の遊女と誘客との手練手管を詠み込んだもののようです。郭内に住む男性にはかかわりのない言葉のようです。
吉原周辺の地理を詠み込んだ川柳から手繰ってゆきます。
ばからしうありんす国の面白さ(37)
誘客に何か冗談などを言われると遊女はそれに対して、よく「馬鹿らしゅうありんす」と言ったもの。そうでなくても吉原などというところは、馬鹿らしいところであったが、その馬鹿らしさが、封建時代の重圧から一時でも、遁れさせてくれる魅力でもあった。武士も町人の息子も文人の雪見船も、アリンス国へアリンス国へと草木の靡くように靡いていったです。
剣先はありんす国の方へ向き(32)
息子のなん風アリンスへ吹き付ける(151.)
ありんす国へ吹き付ける雪見船(87)
このアリンス国は日本堤の土手八丁を越え、衣紋坂を下り、五十間道を行けば、すぐ眼前に展開する不夜城だそうです。
日本からアリンス国は遠からず(54.) 日本を越すとありんす国へ出る(川柳柳2編)
アリンス国はわかりやすく言えば「遊女を買う州」でありましょう。
アイリスをカフ州とも申し(87)
ここには「タイコモチ」という者がいて、遊女と誘客の間を面白くおかしくしてくれたようです。
川柳界にも「タイコモチ」のような人がいると一般の人にも通じるのでしょうね。
吉原、すなわちアリンス国は江戸の北方にあるので、南方にある品川遊郭(元来は宿場)に対して遊人の間では北国などとも言われていました。ここの遊女にアリンス語を使わせるには第一に、日本の各地方から集めた「女」(それぞれ訛りの多い言葉を使う雑多な女)を統一する必要があった。土臭に満ちた田舎丸出しの言葉では「粋」と通をもって任ずる江戸っ子の鑑賞には絶えなかった。方言の差は言葉の語尾、特に助動詞において著しく表れる。この助動詞において方言を統一したとみられるのが「アリンス」であり「アイリス」であり「呉ンナンシ」などでありました。
北国なまりどうしてすかうしいす(22) りんすしいす北かたのことばなり(15) 蘭語でも蛮後でもなしヲスザンス(154) おすざんす是通人のねごとなり(41)
このアリンス語を田舎での娘が習って一人前になるには容易なことではなかったようです。アリンス語を使いだしたら嫁に行くにも抜けなくて大変だったようです。遊女上がりの嫁などその素性を隠すことが出来なかったそうです。
さと言葉習ふも抜くも一苦労(40) 泥水に住めば言葉もにごりんす(107)
アリンス語が自由に使えるようになるころには誘客をあしらう手管を覚え、キツネらしく騙して金を巻き上げることも上手になる。
国の訛りが抜けてきて金に成り(87)
こんな女性を家庭に入れたとしたら、抜けきらない「オス」「ザンス」に対して反感を持つものは必ずしも姑ばかりとは限らない。郭の取り持ちが引手茶屋の女房などによってやられることを、
ありんすの通弁は茶屋の女房なり(29)
と詠まれています。川柳でその時代を考証するのも楽しいですね。
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