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 暑さしのぎに立ち寄った神社の境内は、都会でありながらビルの谷間と比べて10度も気温が低いように感じた。「セミ時雨」とは、コレだろう…というほど、音の矢が降り注いでくる。
 フト見上げると、すっかり昼を過ぎたのに、1匹の暢気なセミが脱皮中だった。もう、羽はしっかりと準備が出来たよう。
 童心に返って、理科観察のように見上げていた。

フォト川柳 うかうかと

 「羽化」というコトバを考えていた時、『まてよ、…コイツもあと8日程度の命。大地の愛に包まれた土の中から出てこなければ、まだまだ生きられたろうに…』と、小さな命が愛おしくなった。
 そういえば、研究者として夢中になっていた頃には「しあわせな時間」を過ごしてきた理研の笹井氏も、経営や指導などといった事にかかずらう事がなかったなら、研究者としての幸せを全うできたのかもしれない。もちろん、能力もあったからこそ、自身の再生医療という研究対象ばかりでなく、理研という組織、地域の活性等への政治的な「顔」として幅広い活躍をしていたのだが、結果的には周囲が潰してしまった気がする。
 メディアの報道も酷かった。勝てば官軍、負ければ賊軍。STAP細胞発見の輝かしさ、持ち上げ方に比べ、疑念が生まれてからは「黒幕」とまで呼ばれた。
 サッカーのサポーターのように、予選リーグで敗退しても日本チームを暖かく向かえた姿は、ちょっとキュンとさせられた。
 最先端の研究は、失敗もリスクもある。せめて、気落ちせずに再現せよ…と、失敗を支えてやれなかったものか。
 「羽化」・・・ああ「うかうか」と研究室という「穴」から出てしまったため、暑さの中を鳴き暮さなければならなかったのか? 与えられた「羽」は、輝かしい夏を謳歌したかと思うと、コロリと大地に骸を横たえ、アリの列に片付けられてしまうのか。
  うかうかと羽を貰って穴を出る
 こんな句が、首筋から生まれた。
 研究者としての後姿に、静に掌をあわせた。

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