2017・02
2017年2月のユーモア川柳入選作品
選考/五十嵐淳隆 2017年2月募集分
春はまだ 問いに答える畳の目 BBブンゴ
季節の変わり目をよく感じるのは畳の目でしょう。光線の境目も春の日差しの温もりも、タタミが一番よく知っています。春はまだかね?と訊かれているタタミを擬人化して、品格のある秀句となりました。
昨日も今日もプレミアムフライデー 白子しげる
プレミアムフライデーなるものが国を挙げて奨励されだしましたが、それは現役世代の皆さんのこと。OB世代からみれば毎日が休みで、何も騒ぐほどのこともないよ・・と、いう皮肉の効いた秀句となりました。やや破調のところがかえって、自嘲気味を表わしています。
真心を込めて贈った下心 岡田淳
バレンタインのチョコなら微笑ましいですが、何か善からぬことを企んでいる輩が要人に贈り物をする、しかも真心を込めて・・と痛烈に揶揄して、秀句となりました。ただ、心の字はどちらかを『〇ごころ』とされたら如何でしょうか。
4回転だけは日本語なんですね 由美
義理チョコに誤解があって結ばれる すずき 善作
騙されていよう優しい嘘だもの 真田 義子
青春の落丁さがすクラス会 結び目
重箱の隅にパワハラの好物 海野えぼし
窓際で青空見つめ生きてゆく 小泉重夫
残り火を燃やすひとりの旅に出る 光畑勝弘
メガネ拭く疑心暗鬼という曇り 結び目
自分史に妻のお陰が多すぎる 松村 しげる
作曲家逝けば昭和の曲流れ つれづれ
派手かしらほんとの歳に聞いてみる 松村 しげる
春うらら庭が多弁になっている 結び目
まあだだよまあだだよとて暮れなずむ 光畑勝弘
七分袖の元はおんなの腕まくり 本間千代子
梅一輪ほどの香りもまだ聞ける おじ丸
春だからダイナミックに跳んでみる 真田 義子
ライバルが磨いてくれる趣味の技 有澤嘉晃
正確さ期待されない金時計 海野えぼし
検査する前は健康体だった 有海静枝
定年と言われしょげてる鍋奉行 太秦三猿
人気なき雛の売場の零六つ 宇宙悠々
トランプが柔軟剤を溶き始め 白子しげる
家々に雛の顔あり春うらら つれづれ
全て聞き口外しないパンの耳 本間千代子
置手紙妻の敬語がちと怖い 小林藤太郎
かしこまる素人寄席の新鮮味 佐野かんじ
古いこと忘れてこその記憶力 城戸幸二
がさつだが一途な愛に努力賞 岡 遊希
シャボン玉弾けて親は諦める 彩古
私の都合聞かずに積もる雪 星野睦悟朗
ユーモアを言えるゆとりが幸を呼ぶ よもやま話
復興を空から見てる千の風 佐藤信則
泥棒ね私のハート盗ったでしょ 柳村光寛
山あいの宿で出てきた海の幸 氷川の杜
ばあちゃんの守りで二歳児草臥れる 城後 朱美
マスクして帽子かぶってただの人 やす坊
不履行の恥に少女が赤茶ける パチンコ姫
税務署へ足取り軽い還付金 海野えぼし
本当は内緒にしたい申告書 佐藤信則
じゃらじゃらと小銭が遊ぶ奇数月 佐藤彰宏
下戸なりに食べて会費の元を取り 颯爽
読むうちに分かった以前買った本 関口行雲
躓いてハット出て来たあの名前 諸行無常
焼き餅が夫婦の溝をなお深め 岡 遊希
はやく行きトイレに近い席を取る 白瀬白洞
食べて寝てトイレに走るバス旅行 浮世っ子
賽銭を数え公表しない寺社 柳村光寛
待合にズラリと並ぶやまいだれ 加藤 当白
安すぎる値では安全疑われ かきくけ子
寄り添うが纏わり付くになる夫 岡野 満