2017・01
2017年1月のユーモア川柳入選作品
選考/五十嵐淳隆 2017年1月募集分
気がつけば燃え尽きている爪の先 麦乃
爪に火をともすように暮らしてきたら、いつの間にか、大切な爪の先が燃え尽きていたのですね。それに気がついて愕然とした時の情景が目に浮かぶようで、哀感を伴って少し笑わせる秀句となりました。
焼き鳥の串で終った宮仕え 光畑勝弘
刺身のつまを焼き鳥の串に差し替えました。焼き鳥は誰かに食べられてしまいますが、串は必ず残されて、二度のお役に立つこともあるでしょう。それを善しとして、頑張ろうや・・という秀句になりました。
厄介な少女路傍に座り込む はなぶさ
あの少女は自分の意志で路傍に座っているのではなく、誰かに無理やり座り込まされているのですね。そこに厄介な問題が潜む・・と詠んで秀句となりました。
前向きに善処と後ろ向いている 有澤嘉晃
あきらめちゃダメだと諭す稀勢の里 白子しげる
吉報を賽銭箱は待っている 西山竹里
誰にでも道を聞かれる顔を持つ 彩古
守秘義務を脱がされている酒の席 岡野 満
病院に母を任せてよく眠る 城後 朱美
トランプがツイッターから溢れでる 阿部闘句朗
評論家トランプ様で飯を食べ 諸行無常
のの字書き母はおいしいお茶いれる 智鈴
初競りの鮪一本家が建つ パチンコ姫
週刊誌ネタがつきると脱ぎたがる すずき 善作
クラス会宝石箱を空にする 結び目
しあわせを測る柱は傷だらけ 佐野かんじ
母ちゃんに似てるとはしゃぐ福笑い 野平光太郎
物忘れ薬ないかと医者に聞き 大西重郎
あの人のふりして風が戸をたたく 智鈴
正直に言えば許すとウソっぽい 有澤嘉晃
懲りもせず蜜に群がる天下り 白子しげる
長生きはしたいけれども銭がない 佐藤彰宏
目の手術説明聞いて止めにする 赤松重信
金の事言ったら耳が遠くなり 時のアオ
お賽銭一円玉は物静か 八十日目
お賽銭カードで払う日も近い 佐藤彰宏
しあわせを神と分け合う初詣 松村 しげる
歴代に舛添さんが出てこない 月波与生
ブーメラン風に乗ったら帰らない 真田 義子
つぶやけば地球の裏の人も聞く 時のアオ
二度三度予定が変わる朝の雨 真田 義子
すっぴんの顔がどうにも浮かばない 西井茜雲
ロボットの上司はやはり下戸だった 海野えぼし
問われては語り裸にされていく 小林藤太郎
体力の低下を口でカバーする 星野睦悟朗
ハンドルも野心も捨てる老いの道 光畑勝弘
預金などないのに嘆くゼロ金利 よもやま話
ボールペン赤芯ばかりすぐに減る 久常三喜夫
平社員やっと落ち着く焼鳥屋 太秦三猿
小寒の前に賀春の葉書来る 星野睦悟朗
省略の波に呑まれる年賀状 松村 しげる
良妻と評判うちの鬼瓦 狭井達彦
手を付けと審判むかし棚に上げ 龍せん
運命線薄くなったと妻見せる 原田正士
米製品トランプくらいなら買える 本間千代子
いい話もっとききたい耳掃除 よし絵
鍋料理二日がかりで夫婦食べ 海野えぼし
三つ指をついて謝る朝帰り 春爺
朝帰り爆睡妻にほっとする 三浦 芳子
幸せを噛み締めたくて行く歯医者 白鳥象堂
厳粛な場でも陽気な腹の虫 時のアオ
客引きの安い卵で生きている 佐藤信則
漢一字私はいつも銭にする 赤松重信