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課題「筆」入選作品
選考/二宮茂男2009年3月募集分
真実の歴史敗者の筆で書く 笹倉良一
勝者は事実を歪め、敗者の筆に真実が浮き出る。歴史は勝者が書き残すと思いがちだが、実は、敗者によって語り継がれて来た。敗者はより客観的かつ冷静な目で史実を見ている。「なるほど」と唸らせる穿ちの句。
決心を鉛筆書きにしています 楠部千鶴
決心が揺らぐ。自分の中で固まった意思が周囲の影響を受けて変わる。「鉛筆書き」は、揺れて迷って書き直してもいいとする立場。こころの愚かさ弱さを、謙虚に受け入れる。が、生き方にこだわる屋台骨は変えない。
悪筆が個性を伸ばす鍵となり 小春日和
悪筆も個性の一つ。いやむしろ悪筆はその人のアイデンティティ。この開き直りがガッツのカギとなり、ベストワンからオンリーワン人生へ。着想の「悪筆」へピントを絞って、余分なところを切り捨てる。
筆ペン派代用食が好きだった 岡田話史
「筆ペン」の愛好者は多い。「筆ペン」は、筆でもなくペンでもない。「筆ペン」に「代用食」をイメージ。主食「米」がなく、代用食「芋饅頭」等で育った。ここにこころを通わせ、自己の真情を巧みに表現する。
アンケートいつもの欄で筆止まり 橋立英樹
さよならと書いて女が筆洗う 見  乗
筆跡にジェラシーがある芳名帳 古俣麻子
乱筆の手紙はもしかしてもしか 小西章雄
権力に立ち向かっても折れぬ筆 みんせい
行間が読めぬ達筆過ぎる文 竹中正幸
時世斬る筆前倣え右倣え 山口昭悦
筆箱の音の静かな登下校 柄 宏一郎
加筆して運命線が狂いだす 原田和洋
有終に余命滴る筆が撥ね 闘句朗
人生の要所押さえる筆の自負 加藤ゆみ子
達人の筆先にでる風と色 岡部英夫
パソコンに達筆仕事奪われる 岩堀洋子
鉛筆を削るナイフも取り上げる 彦  翁
悪筆のお陰で顔を覚えられ 悠  歩
わたくしがどうしても出る筆のあと 熊坂よし江
能弁で筆も立つから友が無い 高橋太一郎
名ばかりで婦唱夫随の筆頭者 端河 潔
そう言えば筆で書いたのいつだろう かんなくず
生きている筆から文字が躍り出る 美高けい
分らぬが頷いている書道展 白  峯
鉛筆で硬い頭を鋤き返す 斉尾くにこ
筆跡を疑う父の遺言書 平松由美江
筆マメがメールマメへとIT化 労後の遊陣
パソコンの嵐に筆も立ち向かう 青山 南
筆文字の手紙がつれてくる嵐 岡本 恵
筆順を知らず凸凹道を行く 佐藤信則
巻紙の文で脅かす母の趣味 石井沙江
筆まめの経歴のあとメール歴 泰  任
達筆の手紙に返事書きそびれ 沢田正司
半紙から2センチ上の真剣味 我汝兄弟
等分に分筆しても違う価値 鶴巻 弘
達筆な品書きだから躊躇する 望月 弘
達筆と幼児の書いた字が似てる 小さな光り
七色を繰り出す絵筆春の土手 和田洋子
飛行機は一筆書きのように降り 日比日踊
ははの筆母の言葉で書いてある 牧 新山
筆不精メール連日送受信 橋田一郎
悪筆と言われてワープロ達人に 城戸幸二
書き足りぬ語り尽くせぬ職事情 杉山太郎