亡母が晩年「頭が馬鹿になった」とよく口にしていた。記憶力の衰えを言っていたのか、理解力の衰えを言っていたのか分からない。多分その両方を言っていたのだろうと思う。その「頭がバカになった」状態になってきたなーと最近しばしば思う。
人の名前を忘れることは、大分前から始まっていた。道で知っている人に会い、名前が出てこないということは前からあったが、それがもっと進んで確かに知っている人だと思うのだが、誰だか思い出せないということが起きるようになった。相手が「しばらく」などと言うので、適当に調子を合わせて差しさわりのない話をしながら、誰だったかと懸命に考えるが分からない。分からないままに、「じゃ、また」と言って分かれる。これは甚だ気分がよくないのである。分からなければ「失礼ですがどちら様でしたっけ」と聞けばいいのだが、相手に失礼になるのではないかと考えたり、名前を聞いても誰だか分からなかったらどうしようとか、いろいろ考えるうちにタイミングを失するのだ。この状態がどこまで進むのか、ひょっとしたら認知症かもなどという考えが頭を過ぎり、不安になってくる。最近はよく忘れ物をする。ATMで金を下ろそうとして、持っていた文庫本などをちょっと横へ置くと、そのまま忘れてくるという具合だ。それでも編集長の仕事を何とか失敗もなくこなしているから、まだ認知症ではあるまいと自分に言い聞かせている昨今なのである。
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