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 この秋、10月4日から8日まで八女(やめ)へ帰郷いたしました。途中広島在住の学生時代の友人と会い、これまでに訪問していなかった三つ目の美術館に行きました。その後、市内各地を案内してもらいました。7、8年振り旧交を温める感懐は格別なものがありました。

 八女市はお茶で全国的に知られるようになりましたが、国鉄や私鉄はとっくの昔に廃線となり、陸の孤島かと言いたくなるほどです。しかし、旧城下町の風情と人情を残した心温まるよい町だと思っています。八女市福島町とゆかりの深い文化人は多く、画家の坂本繁二郎氏が愛された風土でもあり、永住の地でありました。また、青木繁も八女とは浅からぬ因縁のあった画家であり、彼の生の軌跡は、作家渡辺洋氏の小説「悲劇の洋画家 青木繁伝」(小学館文庫)で知ることが出来ます。

 江戸時代の俳人志田野坡・服部嵐雪からつづく八女の俳壇系譜も知られ、江戸中期以来、誹諧文化が花開いています。八女の俳祖は、橘雪庵貫嵐であり、多くの俳人を育てています。文松延芸評論家の山本健吉・女流俳人の石野秀野夫妻はこの地に眠り、夫婦句碑があります。健吉の父、石橋忍月も当地の生まれであり、上京後ももしばしば八女に来ています。伝記作家、小島直記氏や小説家、中薗英助氏は八女の育ちであり、現代の語り部、五木寛之氏もこの地で高校時代まで過ごしています。

 今回驚いたのは、あの山頭火が50歳の折に八女の地を巡遊して作った、「うしろ姿のしぐれてゆくか」の句碑が市内の八女公園に建立されていたことです。山頭火は、昭和6年12月24日夜に八女福島に宿泊しています。これは、画家、杉山洋氏の調査で明らかになったことです。

 できれば、9月の彼岸の中日前後に、市内の福島八幡宮の放生会で上演される燈籠人形を見ていただきたいものです。江戸上方の流れを汲むなかなか見応えのある人形劇です。これには上記の橘雪庵貫嵐こと松延貫嵐が貢献しています。彼は大坂で人形浄瑠璃作者として活躍していますが、八女の地で燈籠人形を動くカラクリ人形に発展させた人であります。俳人になったのはこれ以後です。なかなか魅力ある文化人だったと思います。

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