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「安倍首相を待つ二つの罠」というタイトルになっている。

筆者は石平氏。1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒の秀才である。1988年に来日。来日中に、天安門事件の非人道的で驚愕の事実を知って、毛沢東主義者を脱する。その後日本で評論活動。石氏のアンテナの高さと、的を射た中国批判は有名である。たしか10年ほど前に中国籍を離れて、日本に帰化している。

その「チャイナウォッチ」。全文を転載しよう。

〈この原稿が掲載されてからおそらく約1週間後、安倍晋三首相は訪中の旅に出かけているはずである。習近平政権は、初めて日本国首相を賓客として招待したわけだが、彼らは一体どのような構えで安倍首相を迎え、日本に対してどのような外交攻勢をかけてくるのだろうか。

習近平主席らはまず、安倍首相に対して「関係改善」への意欲を大いに示してくるのであろう。アメリカとけんかするときに日本に接近してくるのは中国伝統の外交戦略の一つである。今はまさに、習主席は心にもない「日中友好」にすがらなければならない時期である。

そして、「友好」を大いに語った後に中国側はおそらく、2つの罠(わな)を設けて安倍首相に仕掛けてくるのであろう。1つは「『一帯一路』戦略に協力する」との言質を安倍首相の口から引き出そうとすることである。習主席肝いりの「一帯一路」戦略は今、国際社会からの猛反発にさらされている。今年5月に、EU(欧州連合)27加盟国の駐中国大使が「中国に利するように設計されている」と「一帯一路」を糾弾したかと思えば、8月には米国のワシントン・ポスト紙が「一帯一路」を「中国版の植民地主義」だとして厳しく批判した。

この「中国版植民地主義」の餌食となっているアジア地域においても、「一帯一路」に対する反発や離反が広がっている。8月に、マレーシアのマハティール首相が同国における「一帯一路」の主要事業の中止を発表したことは最近の一例である。

習主席の「一帯一路」は今や風前のともしびであるが、それを窮地から救い出して延命させるために、中国側は、経済力と国際的影響力のある日本に助けを求めてくるであろう。9月11日、中国の程永華駐日大使が都内で講演して「一帯一路」への日本の協力に「期待」を表明したのは、まさに中国側のこのような思惑の表れである。

したがって安倍首相の訪中に当たり、中国側はおそらく、首相の口から「日本としては一帯一路に協力する」との言葉を引き出そうと躍起になるのであろう。これで瀕死(ひんし)の「一帯一路」を元気づける一方、日本と安倍首相の国際的影響力を利用して「一帯一路」への批判を封じ込むこともできるからである。

しかし、安倍首相は外交辞令としても「協力する」と言ってはいけない。この一言を発しただけで、日本は「中国版植民地主義」の加担者だとみなされ、国際社会における日本のイメージダウンにつながるからである。

安倍首相を待ち受けるもう1つの罠は、中国が必ずや「自由貿易」の大義名分を振りかざして日本を米中貿易戦争に巻き込もうとすることである。現に、中国の李克強首相は今月10日、福田康夫元首相との会談で「日本とともに自由貿易の発展を擁護したい」と述べ、日本に連携を呼びかけた。安倍首相に対しても中国側は当然、より一層の熱意で「連携」を働きかけてくるのであろう。

もちろん安倍首相がトランプ大統領を敵に回して中国の味方になるような愚を冒すはずもない。それでも、日本国の首相が中国の言う「自由貿易」に同調するような不用心な発言をしてしまえば、それは必ずや中国に悪用されて、あたかも日本が中国と連携して米国の貿易政策に反対しているかのように印象操作されるであろう。

だから、安倍首相が今回の訪中に当たって、関係改善に乗り出すのも「友好」を語るのも問題はないと思うが、習近平政権対日外交の「下心」に留意して中国に利用されるような発言を控えてもらいたい。

外交とは言葉による戦いだから、首相の発する一言一言には、日本の国益と名誉が関わっているのである。〉



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