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(6月7日付け産経新聞。米朝会談目前、横田早紀江さんの手記です。そのまま掲載します。写真:母の横田早紀江さんに抱かれた双子の弟たちにほほを寄せる当時4歳のめぐみさん=昭和44年、東京都内

期待と絶望を重ね迎えた「大切な時」

           心静かに成り行き見つめたい

 めぐみちゃん、こんにちは。毎日が飛ぶように過ぎ去り、今年も一年の半ばを過ぎようとしています。季節の移ろいは早く、木々の緑は濃くなり、梅雨を迎え、そして暑い夏の気配が迫ってくるように感じます。
家の周りにはきょうも、あなたが大好きな色とりどりのきれいな花が咲き、心を明るくしてくれます。めぐみちゃんと一緒に、日本の美しい風景を何も考えず、ただ、静かに眺めたい。ずっと思い続けてきた願いは、募るばかりです。
お父さんもお母さんも、本当に年を取ってしまいました。拉致被害者の救出を呼びかける写真展などで、めぐみちゃんと一緒に家族みんなで撮った写真を見ると「ああ、こんなに若いころがあったんだ」と、気が遠くなってしまいます。
いつも明るく、楽しそうに笑い、元気いっぱいだったあなたの姿は、13歳の女の子のままで止まっています。それを取り戻せず、40年も時がたってしまった。怒り、悲しみ、悔しさ。途方もない感情がこみ上げますが、涙は枯れ果て、あなたの救出だけを心に決め、前へ前へと進んでいます。
厳しく、難しい状況が続いた拉致問題は今、大切な時を迎えています。各国の指導者が歩み寄り、平和について話し合っています。
ただ、私たち家族はいつも、複雑で理解しがたい政治や国際関係に翻弄されてきました。期待が裏切られて絶望のふちに追いやられたことは幾度もあります。
つい最近も、一度は決まった米国のトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩氏の首脳会談が「中止」と発表されました。そうかと思えば瞬く間に、交渉の場を再び設ける動きが進み、当初の予定通り会談を開催することが表明されました。
各国の思惑、激しい揺さぶり、熾烈な駆け引き-。私たち庶民に激しい世界の実態が見えるはずもなく、とまどうばかりです。いろいろな方から拉致問題の展望や世界の動きについて問われますが、そのたびにただ、困惑してしまいます。

だから、お父さんとお母さんは心静かに、成り行きを見つめたいと思います。

41年前にめぐみちゃんが姿を消し、21年前に北朝鮮で生きていることが分かりました。平成14年、北朝鮮はあなたが「死亡した」と説明し、偽の遺骨を送ってきたことまでありました。

そしてきょう、ここに至るまで、拉致被害者の帰国に向けて明るい希望が出たかと思えば、夜露のごとく消え去ることが何度も繰り返されてきました。振り返ると、何も動きがなく、静まりかえった時間が続き、身も心も押しつぶされるように感じる日々が一番、長かったように思います。

「喜び勇むのではなく、嘆き悲しむのでもなく、常に『真ん中』の心でいる」

期待しすぎるのは良くない。絶望からは何も生まれない。お母さんは毎日、平静な思いで、身と心を真ん中に置いて過ごせるよう祈りながら、あなたの帰国を待っています。

家族は皆、めぐみちゃんたちすべての拉致被害者を救おうと、国内外で一生懸命、声をあげています。

5月にも弟の拓也や、田口八重子さんのご長男の飯塚耕一郎さんが、加藤勝信大臣、超党派拉致議連、救う会の皆さんとともに米国に渡り、拉致問題の解決に向けて、米国政府や世論に協力をお願いしました。

拓也は、あなたが連れ去られる直前まで大切にしていた人形を胸に抱いて、心を込めて、一心に救出を訴えていました。

お父さんやお母さんたち親の世代の家族も長年、何度も海外に飛び、被害者救出を訴えてきましたが、皆本当に老いてしまい、自らの足で駆け回ることは難しくなってしまいました。

被害者と再会できぬまま命が尽き果て、大切な方々が次々と亡くなっていきました。残された家族は、必死の思いで日々を生き、命をつないでいます。お父さんも体調不良で入院しましたが、めぐみちゃんに元気な姿で会えるよう、毎日を一生懸命過ごしています。

家族会は先日、安倍晋三首相にお会いしました。安倍首相は米朝首脳会談、さらに、すべての拉致被害者の帰国に向け、日本と北朝鮮が交渉する局面も見すえて、解決にかける思いを語っていらっしゃいました。

お母さんは「1人でも多くの拉致被害者が元気に、生きて帰ってくることだけが願いです」と申し上げました。気が遠くなるほど長い時がたちながら、いまだ帰国を果たせない数多くの被害者が、北朝鮮の地で救いを待っています。

拉致は複雑で奥が深く、えたいの知れぬ恐ろしい問題に見えます。でも、その本質は、国の意思で罪のない人々を無理矢理に連れ去った「国家犯罪」です。拉致は、人の幸せを根こそぎ奪い取る非道きわまりない人権侵害であり、そもそも、外交交渉の「道具」とすることなど決して、許されるものではありません。

だから、お母さんはいつも「北朝鮮の指導者はまっすぐな心を取り戻し、拉致被害者全員を帰国させ、平和の道を歩んでほしい」と願います。真心を持ち、世界の平和と、国民の幸せをかなえる決意があれば、拉致問題も、すべてを消し去ってしまうかもしれない核の問題も、必ず、前に進めることができるはずです。

「拉致問題を解決できなければ国家の恥です」。お母さんは常日頃、皆様に申し上げます。日本政府、そしてすべての政治家の皆さんは重大な時を迎えた今、知恵を集め、全身全霊をささげ、国民を救い、守るという責務を果たしていただきたいと願います。お父さんもお母さんも、その行く末を、しっかり見届けるつもりです。

すべての拉致被害者に必ず、祖国の土を踏ませていただきたい。毎日祈りながら、めぐみちゃんと抱き合う日を待ちわびています。



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