3年ほど前、孫娘に会うため大阪まで行った。既に何度も行っているので電車の乗り方には慣れていた。新大阪駅で新幹線を降り、在来線のJR京都線に乗り換えて京都方面の電車に乗った。お昼前頃だったので大して混んではいなかった。ちょっと大きい荷物を持ちながら、空いている座席を見つけようと見渡したが見つからなかった。目を少しキョロキョロさせながらつり革につかまり立っていると、近くに座っていたおばさん(私と同じぐらいの年齢か)が私に気づいて、次の駅で降りるからここに座っていいよ(多分関西弁)、と親切に声をかけてくれた。嬉しかったが微妙だった。いや軽いショックを受けた。当時62歳。生まれて初めて年寄(高齢者)と見られ座席を譲られたのである。私は頭の髪の毛がもうほとんど無い。おまけに光っている(笑)。だいぶ前からそういう風貌なので、今更老け顔に思われても気にするようなことはないが、電車の中で席を譲られるとなると些か話が違ってくる。ジョギングにウォーキングとそれなりに毎日運動はしているのだが。嗚呼…。しかし、おばさんの好意は素直に受けて座った。
これには後日談がある。翌年、千葉の松戸で親戚の法事があり、80歳になる叔母さんと電車で出かけた。東武線から乗ってJR武蔵野線に乗り換えたのだが、車内は少し混んでいて叔母だけが座れて、私はつり革につかまって立っていた。叔母と世間話をしながら、ふと一年前の「座席譲られ事件」を思い出してそのことを話し、私もいよいよいそういう歳になって来たと叔母に笑いながら話したのである。
そうしたら、叔母の隣に座っていた男性の若者がいきなり立ち上がり、私に席を譲りドア方面に移動したのである。そんなことしてくれなくても大丈夫だと固辞したのだが、逃げるようにして移って行った。席を譲ってもらいたくてそんな話題を出した訳ではさらさらないというのに、その若者の素直な行動に感心したが、これまた微妙な気持ちになった。
それ以来64歳に至る現在まで、まだ電車で座席を譲られたことはない。コロナ騒ぎであまり電車に乗っていないということもあるが。
貴重な(!)体験をされましたね。
「ああついにシルバー席を譲られる」(作者は五十嵐 修さん、選者は伊藤正紀氏)。
20年ほど前の、雀郎まつり入選句です。小生の記憶が正しければ、ですが。(たぶん、間違いはありません。)
ありがとうございます。
本当に貴重な体験でした。少しずつ観念していきます。