1971年生まれの著者は、高齢化の進む川柳界にあって活躍の目覚ましい期待の若手作家の一人。
感情は時に、こころの中で、ドタバタしている小さなドラゴンのようなもの―。その“ドタバタ”、“ジタバタ”しているものを、十七音のリズムの中で、なだめながら、はみだしながら、引き出してくれる―。(「あとがきより」)
多面体の水晶のような繊細かつ純粋な著者自身の内部に、ひとたび光という名の外部からの刺激が取り込まれると、やがて川柳が幾筋もの光の筋となって再び外部へと放出される。
第一章「ろ過すれば何も残らぬ帰り道」、第二章「モンスター場数のなさに現れる」、第三章「逆光も逆境もあるサンセット」の三章構成。自分の想いを「いつからか何となく」川柳作品として留めるようになったという著者に、川柳は確かな存在として寄りそっている。
ろ過すれば何も残らぬ帰り道
同性の鬼はさらなる手強さだ
モンスター場数のなさに現れる
栓抜きで抜けたらいいな先入観
差し色に変えていけたらこの日々も
見落とすまいとこころまでドライアイ
感情を溶いても溶いてもダマになる