古い
課題「古い」入選作品
選考/本田智彦 2017年6月募集分
根性論説けば古いと嫌われる 白子しげる
何かにつけ不調なとき、根性をたたき直すとよくいいます。これは昔の父親がよく使った言葉、今の時代は"たたく”となると問題視されます。そして若い人に嫌われますね。
手当てする古木へ樹医の優しい目 丸山 繁爺
樹木医は木に対する愛情がないと、手当てすることはできません、特に桜の木など長年の経験が必要です。どうすれば元気に生きかえるかを考えます。
ふる里は古い地図しか載ってない 上原 稔
市町村合併で、××市に統一され最近の地図にはその市の名に変わっていて、昔の村の字の名前はすっかり消えています。探すのに戸惑いますね。
古着出し古着をしまう衣更え 久常三喜夫
お下がりの古い教科書だったなぁ じんじん
若者に古いと言われ黙り込む 龍せん
賑わった往時を偲ぶ無人駅 木村 行吉
敷いてある古新聞を読みふける 十六夜
電子辞書持って遠のく広辞苑 ミツエ
恐竜展太古の雄姿蘇る 福田 和人
古くても新しくても妻は妻 はぐれ雲
古いのは帽子でなくて中味です 諸行無常
敗戦を古い話にしてしまう 光畑勝弘
トラウマの古い傷跡疼き出す 沢田博昭
歳時記は古びることがない不思議 綉綉
クラス会古い話が大手ふる すずき善作
古い傷ヒョイと浮かんで苦しめる 上山堅坊
古き良き時代年寄りの口癖 高橋 太一郎
バンカラの熱気を偲ぶボロ校舎 太秦三猿
手も足も出さぬが口は出す古老 白鳥象堂
古いと言うだけの価値なら持ち合わす 吉田 陽子
古い服出して眺めてまたしまう 星野睦悟朗
ハイカラな古い言葉に品がある みんせい
古き良きボクの昭和にあった夢 加藤胖
道端の石仏鼻と耳が欠け 美和山吹
昭和史を繰ればセピアの電波塔 陽香
賞味期限舌が判断した昭和 竹中えぼし
こつこつと弱音は吐かぬ古時計 辻 貴希
古くても使い勝手の良い亭主 やす坊
古傷が痛み眠れぬ雨の夜 ねこママ
現代に教育勅語古すぎる 木村 行吉
昔一年 今一日で 古くなる 原田正士
思い出は古新聞に混ぜ捨てる 汐海 岬
古美術の価値を知らずに捨て置かれ つれづれ
古典には今と変わらぬ人生が あっちゃんパパ
木造校舎介護施設として生きる あそか
古時計ゼンマイ仕掛け父の声 しゅういち
古いから価値があるとは限らない 麦乃
いにしえの壁画にロマン垣間見る 沢田正司
帰郷して古い地名を知らぬ人 かきくけ子
もの造り尺貫法が良く似合う 佐藤信則
古川柳身につまされる事ばかり きぃろっく
古いなど言うが伝統守ってる えみゆ
考えは古いが知恵は冴えている 彩古
新規店古い暖簾で客を呼ぶ 武良 銀茶
アナログ派月に一度の古本屋 加藤胖
オークション凛と胸張る古代土器 福田 和人
先生の足を引っ張る古い傷 亀 歩
古株が仕切る酒席は揉めません 呆け天
忘却は古傷を全部拭い去る 大西 重郎
レコードのノイズを好むアナログ派 ねこママ
古い順記憶は消えて欲しいのに 船岡五郎
考えが古いと祖父が戒める はぐれ雲